北朝鮮の女子高生らの「命がけの自由」を支える密輸業者たち (2/3ページ)

デイリーNKジャパン

1000台ともなれば、一晩で1年分の生活費が手に入る。

品物は未開封の箱詰めされたものなので、荷物もかさばる。対岸の中国から国境の川を渡ってくるが、農業用トラクターのタイヤチューブを使った船が主な運搬手段だ。チューブをふくらませ、木の板を固定すれば船になる。北朝鮮側に着くとトラックに載せ替えて、キム氏の下に荷物が届く。運送には現地の国境警備隊長の車を利用して行っていたというから驚きだ。もちろん、キム氏が直接出向くことはしない。警備隊の兵士にカネをつかませ「使い走り」させていた。

代金の決済は、少しばかり複雑だ。「トンテコ(金梃子)」と呼ばれる金融業者が仲介に入る。この業者は中国側と北朝鮮側に「支店」を構えており、北朝鮮側の業者に金額を払えば、中国側にお金がわたる算段だ。「トンテコ」は融資もしてくれる。利子はいわゆる「トイチ」、一日1%の超高金利だ。中国側への支払いが間に合わないときに頼むことがあるという。

ただ、「商売はラクではなかったと」キム氏はため息交じりに明かす。理由は「当局の取締り」のためだ。例えば、卸し業者が取締りにあった場合、損するのはキム氏である。なぜなら、卸し業者は通常、品物をさばき終わった後にキム氏に代金を入金するからだ。途中で品物を没収されると代金が回収できず、キム氏は中国側に「払い損」となる。この時、一時的に「トンテコ」に資金を借りていたら大損となる。

さらに、「2014年頃からはこれまで密輸の取締りに関わってこなかった、国家安全保衛部(以下、保衛部)の連中が近づいてきた」とキム氏は明かす。「彼らは逮捕をちらつかせ、露骨に現金を要求してきた」という。泣く子も黙る秘密警察の保衛部ににらまれたら、逃れるのは容易ではない。最近では、ある女子大生が海外ドラマのファイルを保有していた容疑で逮捕され、凄惨な拷問を受けた事例もある。

北朝鮮では金儲けをしようと思うと、何かしらの違法行為を犯すことになる。密輸業者の存在は公然の秘密のため、特に当局の標的になりやすい。ただでさえ、密輸を行うために地元の保安部(警察)と国境警備隊(軍)にワイロをばらまいていたのに、商売の足しにならない保衛部まで金をせびりはじめたら、ひとたまりもない。このためキム氏は結局、密輸の仕事をあきらめ北朝鮮を脱出した。

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