北朝鮮の女子高生らの「命がけの自由」を支える密輸業者たち (1/3ページ)
冬のソナタ、テジャングム、天国の階段、花嫁はギャングスタ―…いわゆる「韓流モノ」はここ10数年、北朝鮮の庶民に高い人気を得てきた。視聴はもちろん違法である。見つかると最悪の場合、公開処刑となるか、恐怖の強制収容所に送られることもある。デイリーNKは昨年10月、海外の映画を見たというだけで、女子高生らが公開裁判にかけられた事実を把握している。
それでも、人々は海外の映画やドラマを見ることを止めようとしない。
女子大生を拷問「ブツ」はCD-Rにはじまり、DVD、USBメモリー、SDカードと小型化する一方、再生用の機器もMP4、パソコン、携帯電話、タブレットといった形で進化してきた。庶民はひと月の生活費と同様、あるいはそれを遥かに上回る高価な機械を買い求めては、布団にくるまり、つかの間の「自由な世界」を、文字通り命がけで楽しんでいる。
その最終進化型が「ノートテル」と呼ばれる、ポータブル再生機だ。8~10インチほどの画面を持ちながら、あらゆるメディアを再生でき、一度充電すれば一週間以上は動くタフな中国製の小型家電は2010年以降、北朝鮮住民のマストアイテムとなっている。日本でVHSが普及したきっかけが成人用ビデオだったことと似ているかもしれない。
「ノートテル」の普及を支えるのはコンテンツだとしても、どのようにして、当局の嫌うこの機器が供給されているのか。答えは「密輸」である。デイリーNKジャパン編集部が11月初頭、北朝鮮で「ノートテル」密輸を行ってきた脱北者と韓国で行ったインタビューを通して、韓流普及のウラ事情を紹介する。
30代の脱北女性キム氏(仮名)は中国と国境を接する某都市で昨年秋まで、2年以上にわたって「ノートテル」の密輸を行っていた。親の代から密輸業者としての長いキャリアを誇るベテランだ。
仕入れ先は中国の朝鮮族の業者だった。価格は235元(約3500円)。これを密輸し、市内の卸し業者に250元(約3750円)で卸す商売だ。一台あたりわずか200円の売上であるが、一度に数百台、多ければ1000台を仕入れていたという。500台としても売上が7500元、諸費用を引いてざっと半分ほどが利益となる。純利益3000元は、4人家族が半年は優に暮らせる儲けだ。