安土桃山時代にあったとされている謎の葬儀の習俗が本当に存在したか否か (2/2ページ)
特に(2)の、「異なる文化圏出身者であった記録者の、うっかり誤解」の可能性は、筆者もあると思う。
■似た習俗が存在した…
実際、戦前に民俗学者柳田国男が記録した、日本各地の様々な葬儀習俗の中に、もしかしたら、この「指先切り落とし」の現代版ではないかと思われる習俗が、幾つかある。
例えば、現在の宮崎県や愛媛県などの一部にあった習俗が、その一つである。こうした地域には、遺体を納棺する際に、死者の持ち物(多くはいわゆる六文銭や米などであった)を入れた袋を、遺体の首に掛けるしきたりがあった。そしてその袋の中には、死者の持ち物だけでなく、近親者などが自分の爪を切って入れるのが習わしだったという。
フロイスやコックスの報告した、西日本の幾つかの大名家の葬儀で行われたとされる「指先切り落とし」と、共通点が少なくない事例である。彼らが報告した「指先切り落とし」のしきたりも、もしかしたら実際にはこのようなものであったかも知れないが、結局事実は謎のままである。
参考文献:ヨーロッパ文化と日本文化、 葬送習俗事典 葬儀の民俗学手帳