金正恩氏の「番犬」が北朝鮮庶民の食い扶持を荒らし始めた (2/2ページ)

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ずかずかと家を訪ねてきては「儲けているのは知ってるぞ」とおどし、200元(約3000円)、500元(約7500円)とカネをせびる。保衛部は政治犯収容所の運営や公開処刑を担当し、拷問においても、顔面を串刺しにするなど手段を選ばない。逆らえる人間がいるはずもないのだ。「1年以上前にワイロで解決した記録までも持ち出してせびってくる」(パク氏)というから、たまったものではない。

パク氏はさらに「恵山市の反探課長までもが、わざわざカネをせびりにやって来る」と明かす。保衛部総出で、金のある所からむしり尽くそうとする姿勢がかいま見える。

このような保衛部の「荒らし」によって、恵山市内の密輸業者は「壊滅に近い」(パク氏)打撃を受け、密輸業者の多くは別の商売に乗り換えたという。

保衛部将校出身で内部の事情に詳しい、脱北者のチョン氏(2011年脱北、仮名・40代男性)はこうした保衛部の変容に、「以前では考えられなかったことだ」と憤慨する。かつては、「保衛部の『金儲け』といえば、罪を見逃す代わりにワイロを受け取るだけ」というプライド(?)と、他の機関の食い扶持に「配慮」する余裕があった。

もっとも、給料もロクに出ない保衛部員の暮らしぶりは、裕福な商売人と比べると天と地ほどの差がある。市場経済化が進む最近の北朝鮮において、現金収入をいかに得るかは誰にとっても死活問題だ。

チョン氏は最後に「ただ今後、保衛部がどこまで儲ければ満足するのかは誰にも分からない」と警告した。強大な権力を持つ保衛部が、カネを追うあまり暴走しないとも限らないからだ。金正恩氏は体制を守るために、諸刃の剣を振るっているのかもしれない。不気味な予言ではないだろうか。

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