金正恩氏が「ぞうきん」と「タバコの銀紙」を集める理由 (1/2ページ)

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金正恩氏が「ぞうきん」と「タバコの銀紙」を集める理由

北朝鮮では今年、36年ぶりに開かれた朝鮮労働党第7回大会(5月)に向け、大増産運動「70日戦闘」が繰り広げられた。その中で、北朝鮮当局は一見すると奇妙とも思える行動を見せた。国家的規模で、国民に対し「古着の供出キャンペーン」を強いたのだ。

庶民はその様を見て「古着まで物乞いする有様なのに、何か成果だ、超過達成だ」と冷笑しているのだが、実はこのキャンペーンの裏にはある重大な事情があった。朝鮮人民軍が、極端な「雑巾(ぞうきん)不足」に苦しんでいたのだ。

軍内部で殺し合い

では、「雑巾不足」の何がそんなに問題なのか。自衛隊OBが次のように説明する。

「北朝鮮に限らず、各国の軍では雑巾、というよりも古着などを裁断したウエスが大量に使われています。用途はもちろん、兵器の手入れ。自動小銃や砲は火薬の燃えカスが砲身や機関部に溜まり易く、泥水をはね飛ばしながら走行する戦車や装甲車の汚れもひどい。頻繁に掃除をしなければ正常に動かなくなり、作戦行動に重大な影響が出てしまうんです」

筆者はこの情報を、3月末に本欄で伝えたのだが、するとすぐさまある識者から、「朝鮮人民軍はなぜ、今になって古着集めに力を入れているのか? ヤバい徴候ではないのか?」との指摘があった。

言われてみれば、それもそうだ。北朝鮮が慢性的なモノ不足であることを考えれば、軍の「ぞうきん不足」も以前からのものであると思われる。また、軍の現場から調達を求める声が上がっても、自分の権力や利権が最優先の政治軍人たちが、真剣に耳を傾けてこなかった状況も想像できる。

それなのに、今になってにわかに「ぞうきん集め」の動きが活発になったのは、米韓との戦争を現実のものとして意識しているからではないか――前述の識者は、こうした可能性を指摘していたのだ。

朝鮮半島の危険要素は、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルだけではない。北朝鮮は、2010年の韓国海軍哨戒艦「天安」撃沈事件や延坪島砲撃事件に見られるように、第2次朝鮮戦争にもつながりかねない、とんでもない軍事的冒険に出ることが実際にある。

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