後世に伝えたい「ニッポンの大ヒット映画」女優!(1)「三田佳子・Wの悲劇」 (2/2ページ)

アサ芸プラス

三田 ホテルの一室でのやり取りは、たしか1シーン1カットの長回しで撮ったはず。身代わりをためらうひろ子ちゃんに「できないはずないわ、あなた女優なのよ。女優、女優、女優!」と迫って。セリフを覚えるというより、身のうちから出るようにしないと、女優が女優を演じることの二重構造はできなかったわ。

──そして静香をクビにしようとするベテランの劇団員の前で、たった1人で「役者とは何か?」を説く場面は圧巻でした。

三田 役者人生で、あんな苦しいのを突きつけられたのは初めてでした。私の演説に対し、他の人たちは高みの見物的に取り囲んで見ているでしょ。その中で「三田佳子はどんな演技を見せてくれるんだい?」という採点されているような状態。スケートに例えるなら、やったことのない4回転ジャンプを初めて跳ぶような怖さでしたよ。

──印象的なセリフに、新人時代はお金もなく、かといってバイトをすれば稽古の時間が取れない。老女優に「そんな時、オンナ使いませんでした?」と詰め寄って見せた。

三田 荒井晴彦さんの生々しくてすばらしいシナリオでしたね。初の大役で緊張する静香に対しても「私の初舞台は緊張で生理がきたけど、血まみれになりながらやったわよ」というセリフも、女優に対して「さあ言ってみろ!」と突きつけてくる感じがあって、奮い立ちました。

──角川映画としては作品の評価も高く、三田佳子としても多くの助演女優賞を獲得されました。

三田 私が無邪気に喜んだことで、それまで主演女優賞オンリーだった映画界の風潮に「助演女優賞」というのが流行語になるくらい、価値観が変わったようです。生きているうちにもう1度、これに匹敵するような緊張感のある作品に出会いたいですね。

「後世に伝えたい「ニッポンの大ヒット映画」女優!(1)「三田佳子・Wの悲劇」」のページです。デイリーニュースオンラインは、澤井信一郎週刊アサヒ芸能 2016年 12/15号Wの悲劇三田佳子薬師丸ひろ子エンタメなどの最新ニュースを毎日配信しています。
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