【日本人が知らないニッポン】加賀の至宝「山中漆器」に出会う (2/2ページ)
ですがそれ以上に、その地域の支配者が彼らの力を欲していたということがあります。先述の通り、職人は大名に強大な力をもたらしていました。
この時代、食器は権力の象徴です。西洋から来た宣教師も、日本では茶碗や漆碗が何よりも大事に扱われると記録に残しています。それを持たない者は、諸大名から見下されていました。
豊臣秀吉は華美な碗を求め続け、その結果侘び寂びを追求する千利休と対立したという有名なエピソードがあります。秀吉自身も彼の上司だった織田信長も、より良い器のために巨万の富を投じたというのは不動の歴史的事実。そしてそれを生み出す職人たちは、激動の時代を切り開く鍵を常に握っていました。
・古きを訪ね新しきを知る
田中さんは天正年間以来の伝統技術を受け継ぎ、なおかつ女性特有の視点からそれを進化発展させています。
加賀の風土が培った漆器の表面は、まるで燃え盛る紅蓮の炎。掌に収まるサイズの中に、数百年分の歴史が凝縮されています。一方で曲線美を強調したデザインは現代のモダンアートを感じさせ、見る者の心を鷲掴みにしてしまいます。
日本には、このような素晴らしい工芸品がたくさん存在します。実際に現地に赴かずとも、それにまつわる品物を目にした瞬間から壮大な旅が始まるのです。
温故知新。それこそが「旅する者」の究極の目的ではないでしょうか。
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