実はクリスチャンの家系なのに…キリスト教徒を処刑してきた北朝鮮の独裁者たち (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

彼が教会に通っていたことは、本人の回顧録でも述べられている。両親が「休息のため通っていただけだ」とする記述になっているが、実際はそうではあるまい。

金日成氏の母親、つまり正恩氏の曾祖母にあたる康盤石(カン・バンソク)氏の名前は、新約聖書に出てくる「使徒ペテロ」にちなんでいる。イエスがペテロに「あなたは私の盤石だから、お前の上に教会を建てよう」と語ったように、「盤石」はキリスト教で特別の意味を持つ言葉とされているのだ。

もともと分断される以前の朝鮮半島北部は、南部よりキリスト教が盛んであり、平壌(ピョンヤン)は『東洋のエルサレム』と呼ばれていたほどだった。金日成氏の父親が通っていた学校も、キリスト教系の学校だった。彼自身も、キリスト教の影響を強く受け、手術を受ける前には祈っていたという証言すらあるのだ。

建国の父の母がクリスチャンで、国母の誕生日がクリスマス・イブ。金正恩体制とキリスト教は、このように浅からぬ因縁で結ばれている。しかし、唯一独裁体制を敷く北朝鮮で、たった一人の最高指導者(金日成、金正日、金正恩)を国民に崇めさせるためには、より強力な唯一神信仰であるキリスト教を排除しなければならなかったのだろう。

それでも、2000年頃から中国を通じてクリスマス文化が入り込み、若者の間でこっそりとパーティーを楽しむのが流行っている。

とくに平壌の幹部や富裕層の若者や大学生は、「キリストの誕生日」というよりは、世界的な楽しいイベントの日として盛大にパーティーを開き、クリスマス・ソングを歌って楽しむ。一部の若者達がクリスマスを楽しむ様子を北朝鮮当局は苦々しい思いで見ているだろう。しかし、特権階級が中心になった遊びであり、すでに定着しつつあることから厳しく取り締れないようだ。

密かに楽しまれているクリスマスパーティーはともかく、北朝鮮でキリスト教を含む信教の自由が認められるためには、金正恩体制の変革なしにはありえないだろう。いずれ北朝鮮でも「そういえば私らの若い頃はクリスマスを楽しむことさえ禁じられていたんだ」と、笑い話ができる時代が来ることを望んでやまない。

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