森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 浜田宏一氏の変節 (1/2ページ)

週刊実話

 1月号の文藝春秋に、浜田宏一元イエール大学教授の「『アベノミクス』私は考え直した」というインタビュー記事が掲載された。この記事は、一人の経済学者の転向という意味を持つだけではない。浜田氏は、内閣官房参与として安倍総理の経済参謀を務めるだけでなく、アベノミクスのシナリオを描いた中心人物だからだ。その浜田氏が、アベノミクスの過ちを指摘したのだ。

 浜田氏は、アベノミクスを全面否定しているわけではない。安倍政権になってから、株価は2倍になり、労働市場も大幅に改善した。しかし問題は、肝心のデフレ脱却がまったく達成されていないことだ。
 アベノミクスの物価目標は、消費者物価で2%だった。そのインフレターゲットを量的金融緩和によって達成することで、デフレマインドを払しょくするというのが、最大の目的だった。ところが、'16年10月の消費者物価指数(生鮮品を除く総合)は、前年比▲0.4%で、物価目標に遠く及んでいない。

 なぜ物価が上がらないのか。浜田氏は8月に発表されたプリンストン大学のクリストファー・シムズ教授の論文を読んで、自分の考え方の誤りに気付いたという。量的金融緩和だけではだめで、それと財政政策を組み合わせないといけないというのだ。
 偉大な経済学者である浜田氏が、そんな当たり前のことに気付いていなかったことに、逆に私は驚いた。量的金融緩和では、銀行保有の国債を日銀が購入し、代金を銀行の口座に振り込む。ところが、景気がよくないので、貸出先の見つからない銀行は、その資金を融資に回すことができない。そこで、資金を日銀の当座預金に預けっぱなしにする。いわゆるブタ積みだ。そうなると、市中にお金が回っていかないから、景気はよくならない。

 それではどうすればよいのかというと、日銀が国債を購入したぶん、政府が新たな国債を発行して、そこで得た財政資金を減税などの形で国民に還元するということだ。そうすれば、実際に国民にお金が回るから、需要が増え、物価も上がり出す。
 もちろん、見た目には赤字国債が増えることになるが、それは問題がない。なぜなら日銀が保有した国債は、日銀が保有し続ける限り元本返済の必要がないし、日銀に支払った国債金利は、日銀剰余金の国庫納付という形で政府に戻ってくるからだ。

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