攻めた錦織、勘を取り戻していくフェデラーに一歩およばず [全豪オープン]

テニスデイリー

攻めた錦織、勘を取り戻していくフェデラーに一歩およばず [全豪オープン]

 オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の大会7日目は男子シングルスの4回戦が行われ、トップハーフのベスト8が決まった。

 第1シードのアンディ・マレー(イギリス)が世界ランク50位のミーシャ・ズベレフ(ドイツ)にまさかの敗戦を喫したあとのロッド・レーバー・アリーナ。ナイトマッチに組まれた注目の一戦、第5シードの錦織圭(日清食品)と第17シードのロジャー・フェデラー(スイス)の4回戦は、3時間24分の接戦の末に錦織が7-6(4) 4-6 1-6 6-4 3-6で敗れ、3年連続の準々決勝進出を果たせなかった。第4シードのスタン・ワウリンカ(スイス)と第12シードのジョーウィルフライ・ツォンガ(フランス)はベスト8に勝ち進んでいる。

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 激しくボールを叩けば、叩いた分だけはね返ってくる。角度をつければそれ以上に鋭い角度のついたショットが戻ってくる。それでも錦織は最後まで攻めた。リスクを負いながらも攻め続けた。

 グランドスラム優勝17回のフェデラーと、初めてグランドスラムで対決。一昨年のツアーファイナルズ以来で通算7回目となる対戦は、本当はもっと大会のクライマックスに近いところで見たかった。しかし、膝のケガの影響で半年間ツアーを離れたフェデラーが17位まで落ちていたため、第5シードの錦織と4回戦で早くも対戦することになった。ブランクの影響を考えれば、フェデラーが実戦感覚を完全に取り戻す前、つまり早いラウンドのほうが勝機は大きいと見ることもできた。

 

 実際、錦織は立ち上がりから4ゲームを連取した。しかし、5-1から5-6まで5ゲームを連取される展開は、最終的に錦織がタイブレークでセットを取ったとはいえ、フェデラーに〈リズム〉を与えてしまったかもしれない。フェデラーは、「僕が2度連続してブレークされるってことは滅多にないんだけど、まあそうなってしまったんだから、セカンドセットへ向けて少しでもいいリズムをつくることがあのときの自分にできたことだった」とあとで語った。

 錦織も第1セットに関する反省の弁を口にしていた。

 「追いつかれたのは、出だしとしてはよくなかったですね。5-2のところでしっかり締めていればセカンドの入り方が変わったと思う」

 第2、第3セットはフェデラーが計4回のブレークに成功して2セットを連取。しかし第4セットは錦織が反撃した。第4ゲーム、7度ものデュースの中で2度ブレークポイントも握られながらサービスキープすると、次のゲームでブレークに成功。フェデラーのグラウンドスマッシュのミスなどにも助けられたが、錦織のアグレッシブなリターンからの攻撃が功を奏した。このブレークを生かして6-4でセットを奪い、最終セットへ。

 第2ゲームのサービスで15-40のピンチを迎えた錦織は、まずファーストサービス一本で1ポイントをしのいだが、決めにいったバックのダウン・ザ・ラインをネットにかけてデュースにもち込むことができなかった。

 そこがもっとも悔やまれるポイントだ。二人の天才オールラウンダーによる数々の芸術的なショット、力と力の激突、技と技の駆け引きが随所に見られたが、最後にギアを上げきれなかった背景に、第5セットになってコート上で治療を受けていた左腰の影響もないとはいえないだろう。コンディションに不安があっては乗り越えられない壁だ。

 アンフォーストエラーは錦織の32に対してフェデラーが47と上回ったが、ウィナーもフェデラーがほぼ2倍の83本。錦織が言うように「常にプレッシャーをかけてくる選手」であるという証だった。ミスが早く、フェデラーらしくないところもあったが、それがブランクの痛手というものなのかもしれない。

 「マレーも負けたし、チャンスがあったので、もったいないとしか言いようがない」

 錦織が逃したチャンスがどれだけ大きかったか、それはフェデラーの喜びようの中に見ることができた。フェデラーはこの勝利で、さらに本来のフェデラーに近づくだろう。

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 女子ダブルスでは穂積絵莉(橋本総業ホールディングス)/加藤未唯(佐川印刷)が3回戦で第4シードのサーニャ・ミルザ(インド)/バーボラ・ストリコバ(チェコ)に6-3 2-6 6-2で勝利。グランドスラム初のベスト8入りを果たした。

 穂積は今大会でシングルスも本戦初出場を果たしたが、加藤はまだだ。しかし、ダブルスでトップ選手と対戦する経験を重ねるうちに、少しずつ意識は変わっていったという。「ランキングも実績も違う相手だと、前は勝ちにいくというより、ゲームをいくつ取れるかな、みたいな感じだった。今はちゃんと勝ちにいけるようになった」と加藤。

 準々決勝の相手は同じノーシードのミリヤナ・ルチッチ バローニ(クロアチア)/アンドレア・ペトコビッチ(ドイツ)。シングルスで実績を持つ2人が相手だが、もちろん勝つ気で臨む。

 ジュニアの部では第10シードの本玉真唯(S.ONE)のほか、永田杏里(チェリーテニスクラブ)、佐藤南帆(有明ジュニアテニスアカデミー)、羽澤慎治(西宮甲英高)が初戦を突破したが、佐藤久真莉(CSJ)と堀江亨(関スポーツ塾・T)は敗れた。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)
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