やくみつるの「シネマ小言主義」 当方、フランスとの「国交断絶」続行中 『ショコラ 〜君がいて、僕がいる〜』 (1/2ページ)

週刊実話

やくみつるの「シネマ小言主義」 当方、フランスとの「国交断絶」続行中 『ショコラ 〜君がいて、僕がいる〜』

 個人的にフランスとの「国交断絶」を決意したのは、1999年。西アフリカのマリ共和国を旅した年ですから、すでに17年も経ってしまいました。その理由というのが、この映画のテーマである「人種差別」に遭遇したことです。

 この映画は、20世紀初めにフランスで実在し、人気を博した「黒人と白人の道化師コンビ」の物語。
 ショコラという芸名は言うまでもなく、黒人の肌の色からきています。一方的にフランスに憧れがちな日本人が聞くと「ショコラ? おしゃれな名前ね」と言いそうですが、その単語にはダブルミーニングで「なぶられ者」「失敗」、はては「死んだ」まで、さまざまなネガティブな意味が隠されているとパンフレットの解説にありました。
 その芸風は、白人が黒人の尻を蹴って笑いをとるという、何がおかしいのかさっぱり分からない代物。観客はすべて白人。その中で「笑い者」にされているショコラは、どうみても「なぶられ」ています。
 欧米では、「人種差別」はヒトラーの圧政と同じくらい、繰り返し描かれるド定番のテーマですが、本作では道化師の存在そのものが表している悲哀を通して、差別の闇の深さが増幅して伝わってくる仕掛けになっています。

 その中で唯一の救いとなるのが、ショコラがどんなに落ちぶれても決して見捨てなかった白人妻の存在。
 20世紀初めというと今よりはるかに差別があからさまだったはずですから、その高いハードルを超えてしまう女性という生物は、頭のカチカチの男に比べてずっとリベラルで強いのだな、と感じさせられます。
 ド定番のテーマとはいえ、アメリカをはじめ欧米各国が保守化し、白人主義が再び台頭してきた今、自戒の意味も込めて発信し続けていくべきなんでしょうね。

 さて冒頭で書いた、個人的「国交断絶」のきっかけですが、17年前、マリに旅した時、レストランで我々一行が席を作ってもらうために待っていたら、後から来たフランス人旅行客たちが当然のように先に案内されて平然としていたのです。
 かつてフランス領だったマリ人の店員たちは、それに対して「そちらは、こちらの日本の方々の席ですよ」と制止することもなく、まるでご主人様に仕えるような態度だった。その瞬間に、自分は1人、フランスとの「国交断絶」を行使しました。

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