金正恩氏が数百人の暗殺・拷問部隊を海外派遣する理由 (2/2ページ)

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しかし、国家経済が貧窮しているため予算は減少する一方だ。そればかりか、逆に国家に上納金を納める義務も負わされる。そのため、国内では富裕層や庶民から恐喝まがいの手口で収奪する。カネを奪い取るためには、時には残忍な手口も厭わない。

保衛省のこうしたやり口は海外でも変わらない。例えば、現場から逃げ出そうとしたある労働者はアキレス腱を切られたり、掘削機で足を潰されたりという凄惨な私刑(リンチ)を受けている。

北朝鮮が海外へ工作員を派遣していることについて、米国の人権団体「北朝鮮人権委員会」(HRNK)のグレッグ・スカラチュー事務総長は米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に次のように語った。

「過去の冷戦時代には、東欧諸国も外国に亡命した主要人物を監視、暗殺するために秘密要員を密かに派遣することがあった。しかし、現在こうした行為をする国は北朝鮮しかない」

スカラチュー氏によると、当時の東欧諸国の工作員は外交官の身分で麻薬取引、武器貿易などの違法ビジネスを行ったり、監視している亡命者を暗殺することもあったという。実際、こうした事例は過去にある。韓国に亡命した故金正日総書記の妻の甥・李韓永(イ・ハニョン)氏は1996年に金日成一族の内幕を暴露。しかし、翌年北朝鮮の工作員によって暗殺された。

今の時代、亡命した北朝鮮幹部、例えば元駐英公使のテ・ヨンホ氏のような人物が工作員によって、いきなり暗殺されるという事態が起こりうるとは考えづらい。その一方で、現場で働く北朝鮮労働者に対する統制はますます厳しくなっている。外貨不足にあえぐ金正恩体制が、海外に派遣された労働者の人権を配慮することなどありえない。国際社会はこうした人権侵害にも厳しい目を注ぐことが必要だ。

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