月アレルギーを発症したアポロ宇宙飛行士のお話 (2/5ページ)
アポロ12号のクルーは、宇宙船が砂塵にまみれ、ヘルメットを脱いだときほとんど何も見えないくらいだったとぼやいた。

■ 月の塵は細かいガラス破片のようなもの
月の塵は一見、柔らかで軽そうに見えるが、実際は鋭くやすりのようにザラザラしている。多くは微小隕石の衝突による破片だが、月面は風も流れる水もないため、月塵は摩耗しない。自然が作用することがないので、砂粒の角が丸くならないのだ。
粉状になった細かいガラスの破片を吸い込んでいるようなもので、健康に重大な害を及ぼす。粒のひとつひとつがギザギザしているので、深く吸い込むとそれが肺に留まり、肺胞嚢や肺胞管を傷つける。
結果的に月面版珪肺症(けいはいしょう)を引き起こすことになる。これは炭坑作業員がよくかかる致死性疾患で、今でもアメリカでは年間100人がこの疾患で亡くなっている。
さらに問題を複雑にしているのは、月の塵には鉄分が多く含まれていて、この鉄を帯びた塵が最近になってアポロ宇宙飛行士の間に高血圧を引き起こしている。

これまでのアポロ計画の報告書で、月塵災禍のことは報告はされていたが、シュミットを思いとどまらせるほどではなかった。
ハーバードで教育を受けたこの地質学者は、月の地形を研究するためにゆうに10年を捧げ、アメリカ地質学調査の宇宙地質学部門で働き、望遠写真を使って、月や惑星の地図を作った。