16歳、単身でフランスへ。田口弘煕、「世界と戦うため」の日々を送る。 (3/4ページ)
行ったばかりの頃はキツかった」
そんな状況を自分で切り拓いた。話せないからといって黙り込んでいては、いつまでたっても変わらない。自分から話しかけ、言葉のキャッチボールをしなければ。そう考え、実践しているうちに性格も変わった。
昨春日本を発って以後、今回が初めての帰国となった息子と会い、父は驚いた。
「11か月ぶりに会い、表情を見て考えようと思っていたんです。厳しいようだったら、違う道も…と思っていたのですが、人間的な成長を感じました。あちらにいく前は無愛想で、こんなに喋るタイプではなかった」
本人も言う。
「こちらに戻ってきて何人かに会うと、変わったね、と言われたり、驚かれたり」
自分を主張しないと埋もれていくだけの国で積極的になった。現在『DELF』はB1。これはA1から始まり、A2、B1~C2まで続くフランス国民教育省が認定した唯一の公式フランス語資格で、1年足らずで日常生活には不便を感じないほどまで上達した。
「これまでほとんど勉強したことがなかった子が、いま自分から取り組んでいますから、変わるものですよね」
父の頬が緩んだ。
「語学学校には、これからフランス語圏に赴任する商社の方が何人か学びに来たりしています。アジアの人は、自分たちの国の言葉のリズムになりがちなのですが、やはりフランス語特有のリズムで話すことが大事だと思います」
そう話す16歳は、年齢以上に落ち着いているように見えた。
将来は日本代表になりたい。ただその前に、渡仏した目的を果たさない限り、夢は叶わないと思っている。
「世界と戦えるようになるためにフランスに来たので、その目標は果たしたいですね」
U18の間に実績を残すことで、その先の進路は変わる。強豪クラブから声がかかることもあれば、国内3部リーグに相当するヴィシーのトップチームでプレーを続け、チャンスを待つ手も。あるいは他のクラブに移籍してチャンスを掴む選択肢もあるが、いずれにしても、まずは現在のクラブで活躍、語学力も高めて進化しなければ先はない。腰を据えて生活し、ラグビーに取り組む覚悟がある。