知ってた?アイルランドにヘビがいない理由
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3月17日はアイルランドにキリスト教を広めた聖人聖パトリックの命日であり、「セントパトリックス・デー」と呼ばれる祝日がある。アイルランドでは何世紀も前からこの日を祝う伝統が受け継がれ、正式に1903年より祝日となった。
この聖人とヘビにまつわる面白い言い伝えがある。それはアイルランドに来るヘビを聖パトリックが全て海に追いやったというものだ。
実際にアイルランドにはヘビがいない。ヘビ恐怖症の人にとってアイルランドは楽園だ。ではなぜ、アイルランドにはヘビがいないのだろう?
それはどうやら、地球の気候が大きく関係していたようだ。かつて大陸と地続きだったアイルランド島は、絶妙のタイミングでヘビの侵入を逃れたようだ。・アイルランドが島になるタイミングと氷河期の影響が重なった
ヘビの進化的起源には不明な点が多いが、トカゲ亜目の一部から進化したと考えられており、1億4500万年前から1億年前の白亜紀前期に派生したと推測されている。
ヘビの祖先がどのような生活をしていたかについては、水生説と陸生・地生説が対立しており、いまだその決着は着いていない。
アイルランドが大陸と陸続きだった時代、最終氷期が訪れる。一帯は氷河に覆われ、自力で体温を維持できない爬虫類が住むには寒すぎた。
やがて地球の気候は変化し、1万年前になると氷河が解け始めたのだが、アイルランドと周辺の大陸の間には冷たい水がどんどん注ぎ込んでいった。
寒すぎてヘビが住めたもんじゃない。8500年前には大陸につながる道もとうとう沈んでしまい、6000年前、ついにアイルランド島は大陸から完全に分離された。
昔はいろいろあったのよ
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冷たい水に阻まれ、陸路が絶たれたアイルランド。かろうじて移住してきたのは野生のイノシシやスズメバチ、そしてヒグマのような動物だった。だがトカゲやヘビにとっては移り住むチャンスがなかったのだ。・他にもヘビのいない場所がある
アイルランド同様、ヘビ不在といわれている場所はほかにもある。代表的な例ではハワイやニュージーランド、グリーンランド、南極大陸などもヘビがいないそうだ。
ヘビ類の分布図
・ウミヘビ
・陸にすむヘビ
赤丸がアイルランド
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image credit:Eightofnine via Wikimedia Commons // Public Domain
世界にあるヘビ不在の地では、皮肉なことにヘビの所有がステータスになってしまい、大きなペットのヘビが脱走したり、外に放されたという報告が無数にある。それでも野生のヘビがいないまま保たれているのは、ある意味小さな奇跡といえるだろう。・お隣のイギリスにはヘビがいる理由
なお、アイルランドのお隣のイギリスには現在ヘビがいるが、氷河期のころまではやっぱりヘビがいなかった。しかし氷河の水が解けた時、アイルランドに通じる道は水没したが、ヨーロッパへの道はなんとか残った。
分布図の拡大図。イギリスはその後もヨーロッパと地続きだった
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image credit:Eightofnine via Wikimedia Commons // Public Domain
その道は陸橋としておよそ2000年の間渡ることができたため、すぐに島となったアイルランドに対し、イギリスにはヨーロッパからヘビを含む動物たちが入ってくる時間が十分あったのだそうだ。
ということで、個人的には手を変え品を変えアイルランドに侵入しようとするヘビたちを聖なる力でドボンドボンと海に落としまくる聖パトリックの姿もかなり気になるのだが、今日のところは妄想にとどめておくことにしよう。
via:mentalfloss、popsci、Wikimedia Commons・translated D/ edited by parumo
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