【不朽の名作】ハリウッドでもリメイクされた社交ダンスをテーマにした作品『Shall we ダンス?』 (2/2ページ)
普通だったら違和感がありそうな、かなりオーバーな演技で、職場や家庭といったリアルな空間との対比を印象づける。青木はダンスが「気持ち悪い」と言われてパートナーのダンサーにコンビ解消などを言い渡される、かわいそうなポジションの役どころになっているが、確かにあの笑わせにきているとしか思えない、ねっとりとした表情では仕方ないところだろう。
竹中は『シコふんじゃった。』でも相撲部の部長をやるなど、コメディー要素で重要な位置にいたが、他にも同作で出演していた柄本明が探偵の役で、田口浩正がダンス教室に通うサラリーマンとして『Shall we ダンス?』にも出演するなど、脇役は周防監督に近い役者で固め、上手く話を動かしている。
脇役は文句なしにいいのだが、それと比較するとメインの役者がちょっとイマイチなのが、この作品の残念なところ。役所が無趣味のサラリーマンという役なのであまり動きがない。その影響で、凄まじく淡白な人物に見えてしまう。ダンスに熱意を注ぎ始めた心境変化もわかりづらくなってしまっている。
それに加え、舞役の草刈が、当時バレリーナで、この作品が女優業を始めて間もない頃ということもあり、どうしてもセリフが慣れてない点が気になる。ダンス講師というポジションであることもかなり問題だ。社交ダンスがどういうものかを説明しなければいけない役という関係上、セリフ量も増えるし、専門用語も多くなる。それらのセリフを完璧に言うことに集中しすぎているのか、過度に説明的な描写が際立ってしまう。
さらに話しているときの表情も硬く、何を考えているのか、非常にわかりにくくなっている。そのために草村礼子がもう1人のダンス講師・田村たま子を演じているのだろうが、これがまた逆効果な面も。舞が何を考えているかわからないような状況のため、たま子が、正平がダンスに興味を持ちそうな魅力の大部分を語っているような印象を受けてしまう。前記したように正平は、他人のプライベートにあまり突っ込むようなタイプでもないので、結局、舞の魅力は容姿だけという感じになってしまうのだ。
とはいっても、なんの刺激もない生活をしていたサラリーマンの、ある意味では再生の物語としては、鑑賞して楽しい部類だろう。作品はコメディーがありつつもシリアスにやるところはちゃんと抑えている。ちゃんと最後は、浮気調査をしていた妻とも和解し、全員幸せといった形で終わる。ただ、ブラック企業問題などがニュースで取り上げられる現在では、この作品の登場人物の行動すらバブル時代のような優雅な雰囲気を感じてしまう可能性がある。その部分ではある意味かなりの憂鬱な作品かも?