胃が張って痛い! 胃が張る原因と対処法まとめ
「胃が張って痛い、苦しい」……そんな症状に悩んでいませんか? 胃の痛みには重大な病気が隠れている可能性もあるので適切に対処したいもの。今回は、胃が張る原因や対処法について消化管内科医・中川頌子先生の解説を紹介します。
■胃が張るとは?まずはじめに「胃が張る」とはどんな症状を指すのでしょうか。医師の中川先生に教えてもらいました。
“胃が張る”とは一般的に、「胃が膨らむことで感じられる胃の痛みや不快感」のことです。単なる食べ過ぎから重い病気までさまざまな原因が考えられますので、自分自身の身体の状態(食事状況や食事内容など)や症状(張り感、痛みがある時間帯や持続時間など)をしっかり観察しましょう。“お腹が張る”という言葉もよく耳にしますが、この場合のお腹は“腸”が張る状態のことを指します。症状を感じる部位によって表現も区別されています。
■胃が張る原因とは?続いて「胃が張る」原因について見ていきましょう。中川先生によると、食べ過ぎや飲みすぎ以外にも、原因があるといいます。
◇(1)食べすぎ・飲みすぎ食べ過ぎや飲みすぎによって、消化が追い付いていない場合に胃の動きが悪くなり張りを感じる場合や、大量の食べ物を消化するために大量の胃液が作られ、胃液が過多になること(胃酸過多)で自身の胃の粘膜にダメージを与えてしまい胃痛を感じる場合もあります。
◇(2)過剰な空気を飲み込んでしまう必要以上に空気を飲み込んでしまうことで生じる胃の張りもあります。原因としては、早食いや食べすぎをはじめ、炭酸飲料水やビールの飲みすぎや発酵食品の過剰摂取など……、生活習慣が大きく影響しています。これ以外では、「ストレス」が原因となり、歯を食いしばったり唾を飲み込むことで、一緒に空気を飲み込んでいることが挙げられます。
◇(3)器質的疾患(組織の障害により引き起こされる疾患)慢性胃炎、胃潰瘍、胃ガンなどが原因で胃の動きが悪くなり食べたものがスムーズに消化されず胃の中にとどまることで張りを感じます。
◇(4)機能性消化管障害(FD)機能性消化管障害とは「胃もたれやみぞおちの痛みなどのつらい症状を繰り返し感じることがあるのに、内視鏡検査などでは異常が見つからない病気」です。①すぐにお腹がいっぱいになってしまう、「早期膨満感」②食後の胃もたれを感じる、「食後愁訴症候群」③胃の知覚過敏によって起こる、「心窩部症候群」の3つに大きく分類されます。
■胃が張って痛いときの対処法胃が張って痛い……そんなときはどうすればいいのでしょうか? 続いて胃が張って痛いときの対処法について紹介します。
◇(1)胃の負担を減らす具体的には規則正しい時間に食事をする、よく噛んで食物を細かくして食べることで消化しやすくする、食べ過ぎに注意して腹八分目でやめる、食後すぐに横にならないなどを心掛けましょう。症状が強い場合は食事を控えることも有効と考えます。
◇(2)食後の激しい運動を控える食後の激しい運動は胃の動きを抑えるので控えましょう。
◇(3)ストレスを貯めない十分な睡眠をとり精神的・肉体的ストレスをためないようにしましょう。
■胃が張って痛いときの注意点 ◇(1)安易に鎮痛剤を使用しない病院を受診される患者さんの中で「胃が痛くて、市販の痛み止めで我慢していました」という方がみえます。痛み止めの種類にもよりますが、痛み止め自体が胃潰瘍などの原因になる場合がありますので、胃が痛い場合は鎮痛剤の使用は控え、医師に相談しましょう。
◇(2)危険信号を見逃さない黒っぽい便が続く場合も要注意です。胃潰瘍や胃ガン、十二指腸潰瘍から出血しているときに便が黒くなる場合があります。そのような症状が現れた時は速やかに病院を受診しましょう。
■胃が張って痛い時は何科に行くべき?先ほど紹介した対処法を試したのにも関わらず、胃の痛みが引かない……そんな場合は我慢せず病院へ行きましょう。胃が張って痛いときに受診すべき科について中川先生に教えてもらいました。
胃が張って痛い場合は一般内科や消化器内科、胃腸科を受診しましょう。ただ注意しなければいけないのは自身が感じている「胃の痛み」が本当に「胃の痛み」なのかどうかという点です。胃もたれや胃痛の症状が実は胃ではなく心臓だったり肝臓や胆のう、膵臓だったりする可能性もあります。初めから決めつけで「胃もたれがあるので内視鏡検査をしたいです」というスタンスより、症状や他の気になる症状などもしっかり伝えることも大事です。
総合的に「胃の張り感」を診察してもらい、胃以外の病気の可能性を否定してもらうことも重要です。その上でやはり胃の症状が疑わしければ消化器内科や胃腸科に行きましょう。上部内視鏡検査(胃カメラ)ができる病院やクリニックであれば、より詳しい検査も可能です。
■番外編~胃の張りに潜む病気とは?~ただの食べ過ぎで胃が張って痛いときは問題ないですが、実は胃の張りには怖い病気が潜む可能性もあるようです。胃が張ることで可能性のある病気について紹介します。
◇(1)慢性胃炎慢性的に胃の粘膜に炎症が起こっている状態で、胃ガンの原因にもなるピロリ菌の感染の可能性もあります。ピロリ菌を除菌する(除去する)治療も行えますので症状が持続する場合は医師に相談しましょう。
◇(2)胃潰瘍胃の粘膜やもっと深いところまでただれ、傷がついた状態です。そこから出血したり、さらに悪化すると穿孔(せんこう)といって胃に穴があいてしまう可能性もあります。
◇(3)胃ガン胃の粘膜から発生したガンです。ステージによって治療法も異なり、早期ガンで一定の条件を満たしていれば内視鏡(胃カメラ)でお腹を切らずに手術ができる場合もあります。
◇(4)逆流性食道炎胃酸が胃と食道のつなぎ目や食道に逆流することで食道の粘膜が炎症を起こします。症状は、胸やけや呑酸(どんさん)という酸っぱいものがこみ上げてくる感じになります。
◇(5)呑気症(空気嚥下症)無意識に空気を飲み込んでしまう病気です。症状は胸やけやげっぷなどで、多くの場合は心因性といって、ストレスの多い人や神経症、うつ状態の方にみられます。治療法としては、まず食事内容や姿勢を見直します。それでもなかなか改善が見られない場合は、病院を受診しましょう。
◇(6)機能性消化管障害(FD)内視鏡検査を行っても異常が認められないにもかかわらず、胃の運動機能が障害される病気です。原因はさまざまで診断が難しいとされています。症状が続く場合は、胃カメラの検査を行ったうえで診断する必要があため、不安な人は一度、消化器内科など胃カメラの検査を受けられる病院やクリニックを受診しましょう。
■まとめ胃が張る原因と対処法について紹介してきました。いかがでしたか? 胃が張って痛い原因にはさまざまあり、簡単に特定できない難しさがあることがわかりましたね。また、胃の痛みを抑えるために安易に鎮痛剤を飲むのも、「胃潰瘍」の原因になる可能性があるので」止めたほうがいいこともわかりました。胃が痛いと感じたときは自己判断せず、一般内科や消化器内科、胃腸科を受診して医師の判断を仰ぎましょう。
(監修:中川頌子)
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