介護業界に本格参入するパナソニック・ソニーの思惑 (2/2ページ)

週刊実話


 「ところが最近は、介護施設や老人ホームに、ソフトバンクの『Pepper』や船井電気関係者らが立ち上げたベンチャー企業のコミュニケーションロボットが導入され、認知症予防やお年寄りの屋内移動のサポート役などに一定の効果をもたらす事が分かってきました。以来、介護用ロボットは盛んに導入される傾向が強まり、'16年では40億円市場、'20年には80億円から100億円規模が見込まれている。そのためにソニーは、再度、ロボット産業に参入する動きを見せているのです」(同)

 パナソニックもしかりだ。経営アナリストはこう言う。
 「パナソニックでは、高齢者や身障者などがベッドに寝たまま、ベッドの一部を切り離して車椅子にする『リショーネ』という商品を開発、販売している。ほかにも同社の施設には、顔認証技術を使った徘徊を防ぐためのドアシステムや、繊維の強化樹脂を取り入れた世界最軽量の掃除機を製作し、家電メーカーの強みを活かしてアピールしている。これが介護施設のみならず、在宅介護、普通の家の高齢者にも浸透していけば巨大な市場になるという期待も、介護事業に力を入れている理由です」(家電メーカー関係者)

 しかし、各社が思い描くほど介護市場はバラ色なのか。というのも、民間信用調査機関の調べでは、'16年度の老人福祉・介護事業の倒産は107件。2000年の調査開始以来、最多となっているからだ。
 「介護業界は、ここ数年、三重苦で苦しんでいる。まず、介護報酬が3年ごとに見直され、毎回職員に対するプラス改定で収益は徐々に悪化していること。さらに職員不足による離職防止のため、人件費は上昇の一途。三つ目は、事業者の過当競争で利用者が集めにくいという点。決して美味しい商売ではないのです」(経営コンサルタント)

 さらに、介護事業関係者がその厳しさをこう続ける。
 「介護事業は、家電メーカーだけでなく、大手ハウジングメーカー、保険業界なども続々と参入している。現在はソニーの施設を見ても分かるように、入居額が40万円〜50万円と高額で、体力のある大手同士で富裕層の激しい争奪戦が起こっている状態です。一方で、中小の介護事業者は三重苦で厳しい経営に陥り、業界内で二極化が顕著となっている。かといって、大手家電メーカーが体力勝負の富裕層争奪サバイバルに勝ち残れる保証はない。日本に外資乱入の可能性もありますからね」

 ソニー、パナソニックともに、これからが正念場だ。
「介護業界に本格参入するパナソニック・ソニーの思惑」のページです。デイリーニュースオンラインは、社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る