ジャーナリスト・森健が突きとめた、名経営者・小倉昌男の「素顔」と「失敗」(後) (2/3ページ)

新刊JP

彼をスーパーヒーローだと持ち上げる人は少なくないですし、事業での輝かしい業績はこれからも称えられるべきです。ただ、それは彼の持つ様々な面の一つであって、その別の部分には一般の人たちと同じような悩みを抱え、悩み、苦しみ、喜びを感じていた。その部分に注目してほしいなと思いました。

――『小倉昌男 祈りと経営』という書籍名も強く印象に残りますが、このタイトルに込めた意味について教えてください。

森:実は経営についてほとんど書いていません。この人の人生のほとんどは経営だったと思いますが、それは彼の自著『経営学』を読めば分かることなので、私が孫引きしても仕方ないなと。

ただ、経営について、知られていないことも書いています。「宅急便」というシステムを発明したのはヤマト運輸ですが、その源流は佐川急便にあったんです。1970年代の事情知る人を取材すると、何人もの人が、「あれは佐川さんを真似したんですよ」と証言されるので私は驚きました。小倉さんの『経営学』には、宅急便の設計過程は書いてあっても、そんなことは書いていなかったからです。これには小倉さんの情報誘導の巧さを感じましたね。

でも、この本のメインは「祈り」の部分ですね。小倉さんの経営者としての一面をA面とすると、「祈り」はB面です。

――「祈り」というと、宗教を思い浮かべますよね。特に彼はプロテスタントからカトリックに改宗しています。その部分がカギになるのではと最初は思っていたのですが。

森:そうなんですよね。私もそこから取材を始めました。もちろんその部分はベースとしてあるのですが、取材をすすめるうちにまた新たな側面が出てきたというのは面白かったです。

――取材を通して様々な小倉昌男の関係者に出会います。なぜ彼らは証言をしてくれたのでしょうか。

森:それは小倉さんに対する信頼だと思います。これはすごいと思ったことがありまして、当時小倉さんの近くにいた人が、小倉さんのことを「親分」「情の人」と呼んでいたんですよ。

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