社会保険労務士とは? 仕事内容と資格について知ろう

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「社会保険労務士」というと、聞き慣れない職種かもしれません。しかし、社会保険労務士は、企業の人事・労務についての重要な仕事を行うスペシャリストです。そのため、ライフワークバランスが特に注目される現代にあっては、ニーズの高い仕事であるともいえます。今回は、社会保険労務士の仕事とは何かついてご紹介します。

■社会保険労務士の仕事とは?

「社会保険労務士」は国家資格で、人事に関する業務全般を一手に行うことが可能です。具体的には、健康保険、厚生年金、雇用保険の手続き業務や、就業規則の作成・改定といった作業です。特に社会保険に関する書類作成や、提出に関する手続きの代行を報酬を得て業として行うことは、社会保険労務士にしかできません。

やってみるとわかりますが、社会保険の事務は大変に面倒な仕事です。保険料率はころころ変わりますし、社員の雇用・退職に合わせて提出しなければならない書類などもあります。これらを漏れなくきちんと行うには最新の専門知識と経験が必要ですから、こういった仕事を社会保険労務士に任せたいという企業も多いのです。

●労働社会保険諸法令(労働基準法、雇用保険法、健康保険法、国民年金法・厚生年金法など)に基づく申請書などの作成/申請書の提出に関する手続きの代行/労働紛争に伴う裁判外紛争解決手続の代理業務(ただしこれは特定社会保険労務士※にしかできません)

●労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)などの作成、事務代理

という社会保険労務士にしかできない業務(これを独占業務といいます)の他に、

●企業の人事・労務管理のコンサルティング業務
●企業・自営業者・個人の社会保険に関するコンサルティング業務

なども、社会保険労務士の仕事です(これは独占業務ではありません)。人事・労務のスペシャリストである社会保険労務士にアドバイスを求める企業は多いのです。

※社会保険労務士の資格を取得した後で、特別研修を修了して「紛争解決手続代理業務試験」に合格しなければなりません。この試験に合格した旨の付記を社会保険労務士名簿に受けると、「特定社会保険労務士」として仕事ができるのです。

■社会保険労務士になるには?

社会保険労務士になるには、「社会保険労務士試験」に合格しないといけません。直近の2016年(平成28年)度の試験の合格率が「4.4%」という非常な難関ですが、この試験に合格し、社会保険労務士の名簿に登録すれば、社会保険労務士として仕事ができるようになります。ただし名簿登録には、労働社会保険諸法令の事務で2年以上の実務経験を積むか、厚生労働大臣が指定した講習を修了する必要があります。

⇒データ出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「過去10年の推移と合格者の年齢階層別・職業別・男女別割合」
http://www.sharosi-siken.or.jp/pdf/05/info_03_suii.pdf
※弁護士の資格を持っている場合には、試験なしでいきなり社会保険労務士の登録が可能です。

ですので、社会保険労務士になるフローとしては、

社会保険労務士試験を受験して合格

2年以上の実務経験 or 厚生労働大臣が指定した講習を修了

社会保険労務士の名簿に登録

となります。ただし、社会保険労務士試験の受験資格については他の試験とはひと味違っています。この受験資格については下を読んでください。

■社会保険労務士の受験資格は三つの条件に分けられます!

社会保険労務士試験の受験資格は、「学歴」「実務経験」「国家試験に合格」という3つの条件のどれかに当てはまればよいことになっています。

1.指定の学歴を有する人
2.指定の実務経験のある人
3.厚生労働大臣の認めた国家試験に合格した人

ですが、以下の詳細は長いので必要な人だけ読んでいただければ結構です。結論からいいますと、当記事の読者は大学生のみなさんが多いでしょうから、(学校教育法(昭和22年法律第26号)による)大学を無事卒業すれば、それで条件を満たし、受験資格を得られます(ただし取得した単位数には注意してください/62単位以上必要です)。

正確を期すためにそれぞれを細かく見てみると、下のようになります。
※「01」などの番号は「受験資格コード」です(詳細は引用元サイトを参照)。

●指定の学歴を有する人
01 学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学、短期大学若しくは高等専門学校(5年制)を卒業した者(専攻の学部学科は問わない)
02 上記の大学(短期大学を除く)において学士の学位を得るのに必要な一般教養科目の学習を終わった者
上記の大学(短期大学を除く)において62単位以上を修得した者(卒業認定単位以外の単位を除く(卒業認定単位は大学へご照会ください)。)
03 旧高等学校令(大正7年勅令第389号)による高等学校高等科、旧大学令(大正7 年勅令第388号)による大学予科又は旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校を卒業し、又は修了した者
04 前記01又は03に掲げる学校等以外で、厚生労働大臣が認めた学校等を卒業し又は所定の課程を修了した者
※厚生労働大臣が認めた学校等については、下記引用元サイトからリンクを参照(筆者注)
05 修業年限が2年以上で、かつ、課程の修了に必要な総授業時間数が、1,700 時間以上の専修学校の専門課程を修了した者

●指定の実務経験のある人
08 労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の役員(非常勤の者を除く)又は従業者として同法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
09 国又は地方公共団体の公務員として行政事務に従事した期間及び特定独立行政法人、特定地方独立行政法人又は日本郵政公社の役員又は職員として行政事務に相当する事務に従事した期間が通算して3年以上になる者(注)日本郵政公社の役員又は職員として従事した期間と民営化後(平成19年10月1日以降)の従事期間の通算はできません。 全国健康保険協会、日本年金機構の役員(非常勤の者を除く)又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間が通算して3年以上になる者(社会保険庁の職員として行政事務に従事した期聞を含む)
11 社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人又は弁護士若しくは弁護士法人の業務の補助の事務に従事した期間が通算して3年以上になる者
12 労働組合の役員として労働組合の業務に専ら従事(いわゆる「専従」という)した期間が通算して3年以上になる者又は会社その他の法人(法人でない社団又は財団を含み、労働組合を除く。以下「法人等」という)の役員として労務を担当した期間が通算して3年以上になる者
13 労働組合の職員又は法人等若しくは事業を営む個人の従業者として労働社会保険諸法令に関する事務(ただし、このうち特別な判断を要しない単純な事務は除く)に従事した期間が通算して3年以上になる者

●厚生労働大臣の認めた国家試験に合格した人
06 社会保険労務士試験以外の国家試験のうち厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者
※厚生労働大臣が認めた国家試験については、下記引用元サイトからリンクを参照(筆者注)
07 司法試験予備試験、旧法の規程による司法試験の第一次試験、旧司法試験の第一次試験又は高等試験予備試験に合格した者
10 行政書士となる資格を有する者
⇒データ引用元:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「社会保険労務士試験の受験資格」
http://www.sharosi-siken.or.jp/exam/shikaku.html

■気になる社会保険労務士のお給料は?

社会保険労務士のお給料について見てみましょう。厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」によりますと、企業規模別に集計した結果は下のようになっています。

●企業規模10人以上の会社の場合
平均年齢:43.4歳
平均勤続年数:10.5年
平均年収:526万5,400円

●企業規模10-99人の会社の場合
平均年齢:41.8歳
平均勤続年数:10.2年
平均年収:519万600円

●企業規模100-999人の会社の場合
平均年齢:46.3歳
平均勤続年数:10.9年
平均年収:539万9,500円

※平均年収は、下記の厚生労働省のデータの「きまって支給する現金給与額」を12倍し(12カ月=1年分)、「年間賞与その他特別給与額」を足して算出しています。

⇒データ出典:厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001062209&cycleCode=0&requestSender=estat

企業規模によらず、社会保険労務士の平均年収は500万円を超えています。これは日本のサラリーマンの平均年収である約400万円より高い水準ですね。しかし、実はやり手の社会保険労務士の中には、このデータをずっと超えた、1,000万円、2,000万円といった年収を得ている人もいらっしゃいます。例えば、企業と高い報酬でコンサルティング契約を結び、そのような契約が複数ある、といった場合です。

保険など労働者のセーフティーネットに関わるものは、労使間で問題となることも多いのです。その係争を避けるために、社会保険労務士の知恵を借りたり、アドバイスを求める経営者もいて、コンサルティング契約を結ぶというケースも。企業がまだ小さいころから経営者と契約を結んでいた社会保険労務士が、企業が大きくなるに従って大きな契約を結ぶといったこともあります。こういった場合は社会保険労務士の役割も企業の成長に合わせて大きなものになるわけです。

また、自分で独立開業するか、社会保険労務士事務所に勤めるか、で年収に差が出ることもあります。資格を取得したので開業! もいいのですが、これで成功するにはやはり人脈や地道な営業活動などが必要になります。資格はあくまでも資格であって、それを高収入に結び付けるには、ある種の営業センスが必要なのです。

社会保険労務士とはどんな仕事か、なるにはどうすればいいかについてご紹介しました。社会保険労務士を目指す人は、開業するかどうかも含めてあらかじめよく考えておくといいでしょう。

(高橋モータース@dcp)

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