中国アスリートは共産党の傀儡?卓球総監督解任に隠された怖い話

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中国アスリートは政府の都合で運命が左右される?(C)孫向文/大洋図書
中国アスリートは政府の都合で運命が左右される?(C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2017年6月20日、中国卓球協会代表大会・常務委員会が劉国梁総監督(41)の退任を発表しました。劉国梁氏の就任期間は3ヶ月足らず、現役時代は五輪・世界選手権全ての種目で優勝経験を持つ名選手で、コーチとしても多数の金メダリストを育成した実績を持つということもあり、今回の退任劇は、中国のみならず日本の卓球ファンの多くが衝撃を受けました。

■金メダリストたちのアカウントは抹消された

 劉氏は中国では絶大な支持を受けている人物です。もちろんアスリートの間でもカリスマ視されており、退任の3日後に中国国内で開催された卓球の国際大会では、劉氏の退任に抗議する形で、馬龍、樊振東、許キンら主力選手が相次いで不参加を表明しました。

 その後、上記の3選手が「微博」(中国版Twitter)に開設していたアカウントが相次いで凍結・削除されました。おそらく解雇の裏事情など暴くことを防ぐための言論統制を目的としたものでしょう。微博のアカウントは一度削除してしまうと、二度と復旧できません。

 3選手は多くの中国国民から敬愛されているため、当然抗議の声が殺到しました。しかし、五毛党(中共政府に有利な情報を書き込むネットユーザーの総称)たちは、「彼らは漢奸売国奴だ」「国を代表する試合を拒否する売国奴」「日本人とグルになって売国」などと、選手たちを罵倒しました。

 さらに「日本人スパイは中国の卓球業界に潜んで中国の卓球業界の瓦解を狙ってる!」「日本人は中国の卓球の世界一の地位を奪おうとしている、陰湿な手口だ」と、日本に罪をなすりつける意見も存在したのです。五毛党は自分たちの利益のために中共政府に媚びる偽の愛国者にすぎません。

 今回の事例に限らず、中国のスポーツ関係者の運命は政府の都合で左右されます。例えば中国のアスリートが五輪や国際大会で好成績をおさめた際、「中国共産党に育てられて感謝しています」といったニュアンスの発言を行うことが半ば義務づけられています。

 特に中国のお家芸である卓球はその傾向が強く、金メダリストたちは英雄として国家の宣伝に使われる一方、成績が残せない選手は黙殺されます。さらに上述の3選手のように金メダリストですら、国家に反逆したとみなされた場合は、容赦なく懲罰が与えられるのです。

 劉氏の退任は、中国の政治家の権力闘争が原因だと推測されています。17年秋季、中国では国会にあたる全国人民代表大会が開幕するのですが、その際、多くの人員変動が行われます。

 現任の国家体育総局副局長である蔡振華氏は、劉氏や現在の卓球女子コーチである孔令輝氏を抜擢した人物であるため、中国国民から絶大な支持を受けています。この事実を受け、自らの地位が脅かされることを恐れた現認国家体育総局局長である苟仲文氏は、蔡氏の功績を抹消するために劉氏を解雇しました。

 国家による育成プロジェクトの結果、中国からは一流アスリートが数多く排出されています。しかし、彼らは政府にコントロールされた存在にすぎません。中国が民主化した時、アスリートたちは本当の栄光を手に入れるのでしょう。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

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