「ええで~」と選手を褒めて伸ばした名伯楽・上田利治氏死去 (1/2ページ)

まいじつ

T.Shima / PIXTA(ピクスタ)
T.Shima / PIXTA(ピクスタ)
吉見健明のダッグアウト取材メモ

「なぜ阪急の優勝ではなく、阪神の惨敗を一面にするの? 新聞作りが間違いだ。売れればいいという新聞作りは間違いやないのか」

7月2日、プロ野球の阪急ブレーブス、オリックス・ブレーブス、日本ハムファイターズを率いた名監督・上田利治氏が80歳で亡くなった。

訃報に接して、最初に思い出したのが冒頭の“上さん”の言葉である。ものすごい迫力で私は叱られたのだ。

「ええで~ええで~」

福本豊、簑田浩二、山田久志、山口高志…選手を誉めまくった上さんの阪急黄金時代に、私は大阪スポニチで阪急を担当していた。そのころブレーブスコーナーがあったテレビ番組に出演した私は、調子に乗って「勝つだけの野球をしていても観客は集まらない」などと上田阪急を批判してしまったことがあった。

そんな因縁もあったので、上さんは本気で私に激怒したのだ。

上さんはこうも言った。

「吉見くん、選手を『ええで~』と誉めるのが、なぜなのかわからないのか。 本当にいい選手を、スポーツ紙が書かない。それがおかしいと思わないんですか? 少しでも紙面に載せてあげてください」

そんな上さんのもとだから、いま思えばアニマル・レスリーのような話題になる選手が何人も生まれた。それでも、阪急ネタは三面トップにはいくが、一面までにはいかなかったのである。

阪急担当記者として私に求められていたスクープは、上田監督の勇退問題だった。毎朝ランニングをしていると聞いて、西宮の上田監督宅を訪ね続けた。そして連日しつこく聞いたのは、「今年限りで勇退すると聞いています。次の監督は山田(久志)ですか? 福本(豊)ですか?」という質問。

まだシーズンが始まったばかりなのに、毎日こんな質問をする記者がいたのだから、温厚な上さんもさすがに怒り、スポニチのデスクに「吉見の朝の取材を止めさせてくれ!」と抗議をした。

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