世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第233回 遠のくインフレ目標の達成 (2/3ページ)
ところが、ミクロレベルでは合理的な国民の支出削減が、マクロ(国民経済)に合成されると、デフレーションという破滅的な経済現象を引き起こしてしまう。
ミクロな合理的行動が、マクロに合成されると最悪の結果をもたらす。ミクロの視点では正しいことでも、それが合成されたマクロの世界では、必ずしも意図しない結果が生じることが、いわゆる「合成の誤謬」だ。デフレは合成の誤謬の産物なのである。
デフレの解決策は、もちろん総需要の拡大になる。とはいえ、実質賃金が下がり、需要が縮小するデフレ期に民間が消費や投資を増やすことはない。だからこそ、通貨発行権という強大な権力を持つ政府が、需要拡大のための財政出動を実施する必要があるのだ。
ところが、安倍政権は'13年6月に『骨太の方針2013』において、'20年までのプライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)の黒字化を閣議決定してしまった。骨太の方針でPB黒字化が決まった以上、予算措置を伴うすべての政策が「緊縮」にならざるを得ない。もっとも、安倍政権は'12年の総選挙で「デフレ脱却」を謳って誕生した政権だ。
PB黒字化路線は、当たり前だが、デフレ促進策になる。デフレ脱却を公約として掲げながら、デフレ促進策を推進する。この不整合の解消のために「救世主」として登場したのが、浜田宏一米エール大名誉教授、岩田規久男学習院大元教授らの、
「日銀がインフレ目標をコミットメントし、量的緩和を継続すると、期待インフレ率が上がり、実質金利が下がり、消費や投資が増えてデフレ脱却できる」
という、いわゆるリフレ派理論だった。
「おカネを発行すれば、デフレから脱却できる」というリフレ派理論に従い、日銀はインフレ目標2%を掲げ、日本銀行が供給する通貨であるMB(マネタリーベース)の拡大を続けた。とはいえ、政府はPB黒字化目標を掲げ、緊縮財政を実施しているわけだ。
政府が緊縮財政というデフレ化政策を推進する反対側で、中央銀行がインフレ目標や量的緩和というデフレ対策を実施すると、どうなるのか――。壮大な社会実験であった。
黒田東彦元財務官が日本銀行総裁に就任して以降、日本銀行はすでに330兆円もの日本円を新たに発行した(ほとんどが日銀当座預金)。