世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第233回 遠のくインフレ目標の達成 (1/3ページ)
物価とは、われわれ生産者が生産するモノやサービスの価格である。モノやサービスの価格が上昇するのが、インフレだ。モノやサービスの価格が上がるためには、当たり前だが、モノやサービスがたくさん買われなければならない。すなわち、消費・投資という需要の拡大が必要なのである。
対してデフレーションとは、国民経済全体で消費・投資の合計、すなわち総需要が不足する経済現象だ。バブル崩壊後、国民は借金返済や銀行預金を増やし、消費や投資を減らした。そのタイミングで政府が増税や政府支出削減といった緊縮財政を強行すると、国民経済の供給能力に対し総需要が不足することになる。
需要不足に陥っても、バブル期の設備投資により拡大したモノやサービスの生産能力、すなわち「供給能力」は減らない。1980年代後半から'91年までのバブル期に、日本企業は何と絶対額でアメリカの2倍に及ぶ設備投資を実施した。人口比を考えると、4倍に達する。バブル期の設備投資により、強大な供給能力を保有したにもかかわらず、バブル崩壊で需要が縮小した。結果、供給能力と総需要の乖離である「デフレギャップ」が発生。
総需要とは、要するに名目GDPである。国民はモノやサービスを「生産」し、顧客に消費・投資として「支出=需要」してもらうことで「所得」を得る。所得創出のプロセスにおいて、生産、需要、所得の3つは必ずイコールになる。
GDPとは、日本語に訳すと国内総生産だ。すなわち、所得創出のプロセスにおける「生産」の合計である。とはいえ、生産、需要、所得の3つは必ずイコールになるため、GDPとは生産の合計であり、所得の合計であると同時に、需要の合計でもあるのだ。というわけで、金額で換算したGDP(名目GDP)が「総需要」に当たる。
また、国民経済がフル稼働した際に生産可能なGDPを「潜在GDP」と呼ぶ。潜在GDPとは、国内のすべての労働者が働き、設備稼働率が100%に達し、さらに生産性向上効果を加味し、日本経済が生産可能な「最大」のGDPになる。分かりやすい書き方をすると、日本経済の「供給能力」だ。
デフレーションとは、日本経済の供給能力に対し、総需要が不足することで発生するのである。借金返済や銀行預金は、国民一人一人にとっては合理的だ。