「文学的失語」に見舞われた芥川賞作家 6年ぶりの新作を語る(2) (2/4ページ)

新刊JP

幼少時からの読書の積み重ねがあるから、いざという時は、まだ何とか言葉が出てきてくれているんだと思います。

――究極的には、書くことより読むことの方が好きなんですか?

諏訪:そんなのもちろんです。十年前、衝動的に応募した群像新人賞をいただいてデビューしましたが、そのご縁がなかったら、サラリーマンをしながら読書人として静かに一生を過ごす気でいました。そうしておけば僕ももう少しまっとうな人間だったかもしれない。

――音や聴覚への意識が強いということで、音楽にも関心が強そうです。普段よく聞いている音楽がありましたら教えていただきたいです。

諏訪:詩吟や謡曲好きな父の趣味もあって、雅楽の越天楽や能楽、浄瑠璃や民謡など、子供の頃から耳に親しんでいました。ロックやジャズ、クラシックやボサノバ、フレンチ・ポップスやキューバ音楽も好きですが、ここ十年くらいは主にノイズ音楽を聞いています。個人的な好みでいえば、音楽でなくても何かの音であればよくて、電話が通話中の「ツーッ、ツーッ」とか、町工場のカッシュン、カッシュンという音はもっと好きです。

ノイズ音楽はフリー・ジャズから派生して、インダス(工場系)といわれる現実音のサンプリングに、別のエレクトロニックな人工の電子音を被せたりして作為的に音楽にしたものなのですが、そういうものを孤独にヘッドフォンで聴くのが至上の悦び……というと何だか変態みたいですが、そういう音楽があって、本書の「無声抄」にも出てきます。

――多方面に豊富な語彙を持たれているため、様々なことに関心を持っている方なのではないかと思ったのですが、最近の関心事がありましたら教えていただきたいです。

諏訪:若い頃から政治的なことには絶対に触れないで人生を終えようと思っていたんですけど、最近あまりにも政治状況が不穏ですよね。

だから、エッセイなどで政権への批判めいたことや、レイシズム批判のようなことを書くこともあります。哲学科では存在論や倫理学以外に、マルクスなどの社会思想も学んだので、いまの民主主義や資本主義の矛盾があまりにもひどく目についてきてしまいました。

――政治的なことについて書くようになったきっかけのようなものはあったのでしょうか。
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