アメリカの白人労働者たちとエリート層の歩み寄りは可能か? 専門家に聞く (3/3ページ)

新刊JP

本書は、両者の相互理解を進めるためにWWCとエリート層が相互に誤解を解き、歩み寄るというためのいくつかの方法を書いていますから、その意味で重要な示唆を与えてくれていると思いますね。

――でも、そう簡単に歩み寄れるのでしょうか。

渡辺:例えばトランプ大統領の支持率を見ても、彼を否定的に見ているのはエリート層が多い。一方で好意的に見ているのはWWCのコア層です。WWCからすればトランプ大統領は分断したアメリカを再び統合してくれる存在で、自分たちの声をすくいあげ、ワシントンに反映させているという感覚です。今までのアメリカの基本的な価値観を蝕むシステムを壊し、アメリカ本来の健全な価値観に戻して、よりフェアな社会で民主主義を機能させているように見えるわけです。

ただ、エリート層は、トランプ大統領の誕生や彼の言説はアメリカの民主主義を根本から否定していると見ている。つまり、見ているアメリカ自体が違うので、その認識をすり寄せていかないといけません。本書はそのきっかけとなりえる本だと思います。

13、14章の提言は非常に重要で、単にWWCの価値観を分析するだけでなく、ステレオ田タイプを修正する力があるというところがこの本の強みだと思いますね。

――最後に、本書の読みどころについて教えて下さい。

渡辺:まず一つは、トランプ大統領の誕生によって白人労働者層に強い関心が集まっている。それはまさにコアなトランプ支持基盤なので、トランプ大統領もこの層の価値観や存在を無視して、政権運営するのは難しい現状があり、それが今の、アメリカファーストの政策につながっています。そういうこともあり、WWCは特にネガティブなステレオタイプで理解されがちですが、この本はデータ分析を通して実像に迫っている。それが大きな読みどころですね。

もう一つ、アメリカだけの話ではなく、格差が拡大した結果、世界に対する意識や考え方が国民間で断絶している中で、どのようにして意識の裂け目を修復するのか、その処方箋を書いているという点です。これは特にアメリカだけではなく、他の社会においても参考になるはずです。

(了)

■渡辺靖さんプロフィール

慶應義塾大学SFC教授(文化人類学、文化政策論、アメリカ研究)。ハーバード大学博士号(Ph.D.)。パリ政治学院客員教授を経て、現職。著書に『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会)、『文化と外交』(中公新書)、『沈まぬアメリカ』(新潮社)、『〈文化〉を捉え直す』(岩波新書)などがある。

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