アメリカの白人労働者たちとエリート層の歩み寄りは可能か? 専門家に聞く (2/3ページ)
また、必ずしもWWCだけではなく、エリート層の中にも「歴史の負の部分も伝えていくべきだ」と考える人は多いです。
――おっしゃる通り、「歴史を示すものとして残しておくべき」という声もあるそうですが、非常に極端な発想ではないかとも思いました。渡辺:リベラルもWWCも両者の一部が非常に先鋭化しているんでしょうね。社会全体がリベラルに傾く中で、それに対する反発として白人至上主義が出てきて、その一部は暴力的な手段を通して訴える。さらにそれに対し、リベラルの一部がかなり過激に反応している状況です。
――これは日本でも見られる光景だと思いますが、極端な考え方の声が大きくなりがちです。渡辺:そうですね。また、主張が極端なほど、イメージとして広がりやすいという部分は有ると思います。実体以上に社会が分断しているように見える部分があるでしょうね。
――それはメディアの報道にも原因がありそうです。この対立構造は世界的なものなのでしょうか?渡辺:少なくとも先進国では見られます。どの国でもミドルクラスの没落が指摘されていて、anywhere(どこでも)生きていける競争力の高いエリート層と、somewhere(どこか特定の場所で)しか生きていけない競争力の低い没落したミドルクラスの差が大きくなっています。もっといえば、ミドルクラスが細分化されていると言っていいでしょう。
これはイギリスではEUからの離脱という結果で示されました。またフランスでもその傾向があります。自国第一主義、排外主義的で、既存のメディアを信じないという特徴があります。
――渡辺先生が解説で、この本で感銘を受けた点としてあげているのが、リベラルやエリート層とWWCの関係改善に対する処方箋です。渡辺:白人だけではなく、広くアメリカ社会全体をとらえたときに、経済格差や勝ち組と負け組の断絶があって、それぞれが見えているアメリカ像が全く違うというところがあります。その断絶は非常に深刻なもので、修復を試みないといけないのですが、なかなかそこに対する処方箋を出してくれる本がなかったんです。