松本潤&有村架純「狂おしい恋」を描いた映画
映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ナラタージュ』
配給/東宝、アスミックエース TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開中
監督/行定勲
出演/松本潤、有村架純、坂口健太郎、市川実日子、大西礼芳ほか
アイドル・松本潤と人気若手女優・有村架純とのいわば“潤・純”コンビによる狂おしいラブ・ストーリー。ちなみに題名の“ナラタージュ”とはナレーションとモンタージュを合わせた言葉で、映画の回想シーン等で使われる語りや編集を意味する。原作は2006年度版『この恋愛小説がスゴい!』で第1位となった島本理生の小説だ。
大学2年の春、高校時代に演劇部の顧問教師だった葉山(松本)の誘いを受け、後輩のためにと卒業公演に参加することとなった泉(有村)。彼女は誰にも言えない葉山との記憶と思いを胸にしまい込んでいたが、再会によりその抑えが効かなくなる…という話だ。何より、有村が朝ドラ『ひよっこ』のときとは打って変わって、不倫ありのトライアングル・ラブ(このふたりに演劇仲間の坂口健太郎が絡む)に陥る女子大学生役なのだから、ファンは仰天だろう。
ボクは常に、女優は“清純派”なんていう看板は早く降ろした方がイイと思っているので、有村架純・24歳のチャレンジは大いに結構。松本とはこれまでの秘めた思いを爆発させるかのように対面座位で、坂口とは薄暗いライトの部屋で胸の谷間を感じさせるキャミ姿で迫るのだ。ただ、いろんな週刊誌が書いているほどには過激な描写ではなく、しょせん現在のリミットはここまで、というマイルドさなので、エロスに関しては過度な期待をしないように。でもまあ、有村は現状、よく頑張ったとは言っておきたい。
松本が参考にした映画「浮雲」
一方の松本は『アイドルとしての光を60%ぐらい削って下さい』と行定監督に言われたそうで、なるほど、当初はアイドルのオーラがなさ過ぎるぐらい消している。見た目、どこにでもいそうな“あまり冴えない高校教師”に見えるから不思議だ。女子高校生にも全くキャーキャー言われない。“天下のマツジュン”にもかかわらず、だ。
松本によると、この映画の参考にと監督に言われたのが、成瀬巳喜男監督の名作『浮雲』(1955年/高峰秀子、森雅之主演)だそうだ。確かに不倫がテーマだし、設定も少し似ている。もちろん、あそこまで激烈なヒロイン像には迫れていないが、アイドルと人気若手女優で、これにトライしたことは意義がある。
一世を風靡した“キラキラ映画”もそろそろ下火になってきた。こういうシビアなラブ・ストーリーを若手俳優たちと取り組むのはイイこと。路面電車もあるロケ地・富山の湿気の多い空気感が作品にマッチしている。東京が舞台ではこうはいかない。
松本潤ファンならDVDで『浮雲』を探して、この新作とセットで見るぐらいの情熱で、どうぞ。