松本人志はつまらなくなったか:ロマン優光連載95 (2/5ページ)

ブッチNEWS

私に限らず、90年代に松本さんの笑いに熱狂していた人の多くはそう感じていたのではないでしょうか? そういった視点から見てしまうと、松本さんが円熟味を増していくことで面白さを得るという方向はあり得ないことでしょう。常に形式の外にいることを期待されていた人物だからです。ダウンタウンとして司会の立場でいる時も、本来の司会としての仕事を務めているのは相方の浜田雅功さんであり、松本さんは隙があれば外部から自分のセンスをぶちこんでくるというようなスタンスをとっていて、予定調和の外にいるように見えていたものです。

お笑いは生もの

 コントにしろ、トークにしろ、かつてのダウンタウンの笑いというものは非常に斬新なものがありました。本当に新しいものとして受け取られていたし、現在のお笑いの雛型の一つになったのは間違いないと思います。現代のお笑いのうちの何割かは、松本さんの影響下にあり、そこを基本に各人がそれぞれ発展させていったものなわけですが、逆にいうとあれだけ新しかった松本さんの笑いに似たものがあちこちに転がっている状態になってしまったのです。そうなってしまうと、昔から松本さんの笑いに触れていた人ならともかく、今のお笑いの現状の中で松本さんに初めて触れる人にとっては、そのオリジナリティが分かりにくくなってしまいます。逆にそこから派生してきた後進の芸人さんのネタの方がそれぞれがニッチな方向に発展させてたり、より大衆向けに振っていたり、様々な受け手の嗜好に対して痒い所に手が届くようになっているわけで、そちらの方が人気を得やすいと思うのです。人気を得やすいといっても、それぞれの嗜好にあわせて色んな芸人さんがチョイスされていく細分化された人気であって、かってのダウンタウンのような広い範囲で大きな人気を得るということではないのですが。なんというか、ロックでいうところのビートルズみたいな立場になってしまっているのです。ビートルズ的なものの色んな断片が普通にあちこちに存在してしまっているため、最初からそれが存在していた世代には逆に彼らの凄さが伝わらないという現象、それに似たものが他のジャンルにも起こっていると思うのです。ダウンタウンに限らず、ツービートもそういう感じだと思います。

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