報復は国も宗教も関係ない普遍的なもの オマル・エル=アッカドインタビュー(1) (3/3ページ)

新刊JP

その意味では、読者を感動させたり共感させたりといったこととは逆の方向を向いて進んでいたわけですが、どうしてサラットがこうなってしまったのかは読者が理解できるようにしたいという気持ちはありました。

――そのサラットは、身長が190cm以上もある、かなり体格のいい女性です。そして自分のいるアメリカ南部と対立する北部軍の高官の命を狙う。この設定であればサラットは男性でもよかったのではないかと思ったのですが、サラットを女性にしたのにはどんな理由があったのでしょうか。

オマル:二つあります。一つは、作品冒頭で彼女がまだ幼かった頃に自宅である貨物コンテナの前で蜂蜜の容器を手にしているイメージが明確に見えていたことです。この少女が中心的なキャラクターになることは、書き始めた時からはっきり認識できました。

もう一つは、過激派的な思想を持つ人が登場する話や、そういった人がどのように悪意を持っていくのかという話は、これまでほとんどが男性目線で作られたものだったことです。そこを今回女性目線で書いたことでまったく違う表現ができた箇所がいくつかあります。

その一つが拷問を受けるシーンで、男性への拷問と女性への拷問は内容も違いますし、そのシーンが与えるインパクトも変わってきます。あとは単純に、男性が主人公の本が世の中には多すぎますよね。

――作中に「戦闘鳥」というドローンが出てきます。これは北軍の兵器で、サラットたちが暮らす南部の町を爆撃する無人機ですが、実は北軍もこの「戦闘鳥」を制御できていないのではないかと南部の人々が噂しあう描写があります。これは、現在イエメンやリビアなど、ドローンが爆撃を行っている地域で誤爆の被害に遭った人々の感覚と近いのではないかと思いました。

オマル:それが私が意図したところで、イエメンやアフガニスタン、リビアで人々が経験していること、つまりいつ爆撃されるかわからない状況で生きているということをここで表したかったんです。

――実在する場所やできごとへのオマージュと読める場所がいくつかあったのが印象的でした。たとえばサラットが収監されていたシュガーロフ収容所は、米軍のグアンタナモ収容キャンプや、イラクのキャンプ・ブッカの面影があります。

オマル:シュガーロフはまさしくグアンタナモをベースにしています。グアンタナモには8回取材で行っていて、軍事演習も見ていますし収容所の中も取材しました。

あとは、作中に難民キャンプが出てきますが、そこはレバノンのシャティーラという難民キャンプの取材体験が元になっていて、作中で起きる大虐殺もこの場所で実際にあったできごとがモチーフになっています。その他にも、ジャーナリストとして見聞きしてきたことや、実際にあった出来事を元にした描写は部分的に散りばめていますね。(後編につづく)

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