現代まで続く皇室との縁。縁結びの神として今も生き続ける、その後の大国主命

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現代まで続く皇室との縁。縁結びの神として今も生き続ける、その後の大国主命

神無月(出雲の神有月)も、いよいよ終盤となりました。これまで数回に渡ってお伝えしてきた大国主命の活躍もいよいよクライマックスとなります。前回は天界の要求に応じて大国主命が降伏したくだりまでを紹介しました。

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その後の彼はどうなったのでしょうか。本項では、大国主命が縁結びの神様となるまでを紹介していきます。

そして、大国主命は地上を去った

天界の天照大神が送り込んで来たタケミカヅチに対し、大国主命は子供のコトシロヌシとタケミナカタからの了承も得て、地上支配の権限を明け渡すことを決めます。ただし、大国主命は交換条件を出し、無条件降伏ではありませんでした。

「私を祀る神殿を、天の神の子が住まうと言う城のように建てて頂きたい。そうすれば、私は幽冥界(ゆうめいかい=目に見えない世界)へ隠遁しましょうぞ」

これには様々な解釈があり、出雲大社の奥へ住んだと言うものから、地下の国への移住、他殺ないし自決で死んでしまったなど諸説があります。祭殿の奥は見えないものですし、目に見えないならば地下の国とも冥府とも取れる表現です。また、そうした不可解な終わり方から無念を呑んで地位を退いた大国主命を祟り神とする説もあり、それを基にした学説や文学作品もあります。

事実、タケミカヅチ=武力を象徴しているならば、大国主命をシンボルとする出雲が戦争で滅亡した史実を神話の元にした可能性も皆無ではありません。いずれにせよ、大国主命が政権に幕をひいたことにより、地上には天照大神の孫・邇邇芸命(ニニギノミコト)が降臨し、新たな時代が始まるのでした。

各地に作った血筋がドラマを生んだ…現代まで続く皇室との縁

大国主命が地上を明け渡してから長い年月が流れた後のことです。大和の国(奈良県)に比売多多良伊須気余理比売(ヒメタタライスケヨリヒメ)という女の子が住んでいました。日本書紀では「媛蹈韛五十鈴媛命(ヒメタタライスズヒメノミコト)」と記載される彼女の父は、大国主命と同一人物とされるオオモノヌシ、ないしはコトシロヌシと言われており、いずれにしても出雲系の出自に変わりはありません。名前にあるタタラは、出雲で盛んであった製鉄で使われたふいごを意味しているともされます。

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そんなヒメタタライスケヨリ姫に人生の転機が訪れたのが、彼女をお后にと望む皇子の来訪でした。その皇子と言うのがニニギノミコトのひ孫にあたる カムヤマトイワレビコノミコト(神倭伊波礼毘古命)。後の神武天皇です。カムヤマトイワレビコの求婚を承諾し、正室になったイスケヨリ姫は2代目の綏靖天皇を産み、その子孫が今の皇室へと繋がっていきます。

おなじみの神様としても知られるように

その後、大国主命は神武天皇の末裔である大和朝廷と密接な関係を保ちながら多くの人から信仰を集めます。11代垂仁天皇が溺愛する皇子が口を利けないのに悩んでいれば祭祀を条件として治癒させたのをはじめ、様々な場面で大国主命と出雲は登場します。

朝廷が仏教を大陸から導入した後は、大国と通じる仏教神・大黒天と合体して崇敬され、それは民間にも広がりました。そのため、昔話や童謡では明らかに大国主命であっても『だいこくさま』として描かれるくらいに浸透しました。

大国主命の持つ最強の武器とは

また、大国主命に服従したアメノホヒノミコトは出雲国造(いずものくにのみやつこ)となって子孫は出雲大社に仕え、今で84代目になります。その跡取りである千家国麿氏が皇室から『姫君様(出雲大社宮司の妻を指す呼称)』を迎えられた際にも、『大国主の大神様のお導きの下』と仰っていたのは記憶に新しいです。

ここで浮かび上がるのが、『大国主命の最強の武器=仁徳』ということです。一時は祟り神になりかけるものの、アメノホヒの命とその子孫が祭祀を請け負ったのを始め、敵側でも彼の人柄を慕う者が多くいました。

他にも、子供であるタケミナカタは各地の諏訪神社で親しまれ、娘(もしくは孫娘)のイスケヨリ姫に至っては後に初代天皇となる皇子のハートをも射止め、大和朝廷建設の立役者にまでなるなど、徳の高さは子孫世代でも健在です。

これらは、徹底抗戦して殺戮と流血で勝つのではなく、相手側との融和で存続を図った神様にふさわしいといえる事績です。そうした優しさと仁徳を持った大国主命は、縁結びの神として今も崇められています。もし、出雲大社へ参拝する時にはそうした大国主命の神話に思いを馳せてみると、より一層の幸せが得られるかも知れませんね。

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