ご当地映画にあるまじきシーン満載!「こいのわ」

まいじつ

ご当地映画にあるまじきシーン満載!「こいのわ」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『こいのわ 婚活クルージング』

配給/KADOKAWA 11月18日より角川シネマ新宿ほかにて全国公開
監督/金子修介
出演/風間杜夫、片瀬那奈、藤田朋子、八嶋智人、白石美帆ほか

近年は地方自治体が、ときには地元企業あるいは非営利団体などと組んで、いわゆる“ご当地映画”が多数作られて、何本も見たが、あえて苦言を申せば、総じて郷土愛が強すぎてPR臭を感じるし、何よりお行儀が良すぎて微温的な作品が目立つのは困ったもんだ。

この映画も“広島県後援”、県庁の結婚支援の“こいのわプロジェクト”が特別協力している堂々たる“地方発信映画”なので、疑り深いボクは、半分眉に唾つけて見たものだ。

良い予感としては、監督が平成『ガメラ』シリーズや、内田有紀が良かった傑作『ばかもの』(2010年)などの金子修介だということ。当欄で紹介済みの同監督の『リンキング・ラブ』も面白かったしね。果たしてこのベテラン才人が、“ご当地映画”という難物にどう取り組むのか。イイ予感ついでに言えば、主演コンビが『蒲田行進曲』(1982年)などの名優・風間杜夫、そしてワイドショーの『シューイチ』などでも活躍のご贔屓女優・片瀬那奈なのもプラス・ポイント!

ご当地映画の悪しき風習に「風穴」を開けた傑作

風間はバツイチ65歳で広島の名物企業家の役。突然の社長職解任にもめげずに心機一転し、第二の人生のパートナー探しを始める。だが、片瀬扮する最初のお見合い相手の美人編集者35歳と大ゲンカしてブチこわし。お互い意地っ張りのふたりは、やがて県の婚活イベントで再会するのだが…。

この構図は、往年のハリウッド映画『或る夜の出来事』(1934年)などから始まる、勝ち気女と皮肉屋男が織り成すラブ・コメの定番だ。金子監督は、風間・片瀬コンビを「わたしのなかではジャック・レモンとゴルディー・ホーンだった」と評している。う~む、確かにそう思いたい気分ではある。

風間・片瀬による年の差“K・Kコンビ”が繰り広げる丁々発止は、最初のお見合いシーンから笑いを誘う。風間が生臭く、俗っぽいけど憎めない往年のモテ男オヤジぶりを絶妙に見せれば、片瀬もドSキャラ含みの“負け犬”美女を、自慢の美脚も惜し気なく披露し、コメディエンヌぶりを発揮する。そして、お行儀が良いのが、お約束のはずの“地方発信映画”にあるまじき(?)シモネタが大いに飛び交う。アケスケな美人女医(白石美帆)、後妻業疑惑の美魔女(中山忍)など癖のあるキャラ、婚活に対する各々の思惑がリアルに綴られる。風間・片瀬が船の寝室で“一線を越える”シーンもあり(別に脱がないが)、少しエッチでも、爽快感を忘れない。

ハリウッド・ラブコメ的な作りを繰り出し、ご当地映画の悪しき傾向に風穴をあけた快作と言える。

「ご当地映画にあるまじきシーン満載!「こいのわ」」のページです。デイリーニュースオンラインは、風間杜夫秋本鉄次のシネマ道片瀬那奈映画エンタメなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧