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本好きリビドー(179) (2/2ページ)

週刊実話


 だが、実際の吉原はとても自由な空間であり、ここを拠点に江戸庶民の解放的で明るい文化が華開いた…というまったく新しい町の姿を綴った本が『吉原の真実 知らないことだらけの江戸風俗』(自由社/700円+税)だ。
 テレビ等で語られる吉原は一面にすぎず、遊女たちはわりと自由な暮らしを満喫しており、遊びにやって来た町人たちとのおおらかな交流があったことや、また、遊びにかかる料金はいくらだったのか、遊女たちの雇用条件は…など、細かいところを丁寧に解説した1冊である。
 吉原が“売春”する場であった以上、人身売買などの暗い側面を持っていたことは否定できない。だが、決してそれだけではなく、江戸庶民の暮らしにしっかりと根づいた、必要不可欠な町だったことが浮きぼりになってくる。
 読後に落語の『明烏』などを聞くと、本の内容がなお面白く感じられるだろう。
 男性目線で見たエッチな記事はない。むろん春画も皆無。だが、意外に知らなかった吉原の実態が理解でき、酒の席でひけらかすウンチクとしては最適。
 著者は、江戸庶民文化・性風俗研究家の秋吉聡子さん。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
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