トモさん、笑う、語る。「プレー中に聞こえるのはふたつの声だけ」

ラグビーリパブリック

日本代表キャップ64。NZ・クライストチャーチ近くのカイアポイ出身。

 ええこと言うなあ。

 そこにいる人たちから、何度も自然に拍手が起きた。

 言葉の主はトンプソン ルーク。11月24日の夜だった。

 同日、大阪は本町にあるニュージーランド料理店「MANUKA」(マヌカ)で同選手のトークライブが開かれた。ジャパンやライナーズのこと。ニュージーランド、ワールドカップについて。人生の話も出て、トモさんの人柄がにじみ出る約90分となった。

「日本も、日本の人たちも、何も変えること、変わることないよ。いいところ、いっぱいあるんだから」

 そう話したのは、2年後に日本にやって来るワールドカップをどう迎えようか、という話題になったときだった。

 日本にやってきて14年目を迎えている。東大阪に住んで12年。仲間たちと力を合わせて戦い、地域の人たちの人情に触れて暮らしてきた。

「外国から来るファンは、普段通りの日本に触れたいと思います。たとえば大阪の人たちは、めちゃくちゃフレンドリーでしょ。それで、みんな楽しいですよ。それに関西には、試合がないときに遊びに行けるところもたくさんある」

 自分自身も京都の海や、和歌山、白浜の海が大好きだ。

「うちの子どもたちは温泉が大好きなんです。『いい子にしないと温泉に行けないよ』と言うぐらい」

 笑いながら、大好きな日本の魅力をあらためて話したりした。

 トモさんの話を聞き入っていた人たちが感動したのは、テストマッチ前のナショナルアンセムを歌う際の胸の高鳴りについて思いを吐露したときだった。

「僕は、いつも大きな声で歌ってきました。外国出身の選手たちも、みんなで国歌の練習をするんですよ。宮崎合宿の時に、歌詞に出てくるさざれ石がある場所に行って、歌に込められた意味を学んだりしました。そうやって、気持ちをひとつにしてチームになる。テストマッチは、そうやって戦うものです」

 トークライブの日はジャパン×フランスの前日だった。トモさんは、「きっといい試合をするよ」と言った。

「トンガ戦を見ても、チームとしてまとまってきているのがわかりました。ジェイミーさん(ジョセフ ヘッドコーチ)も、コーチのトニー・ブラウンさんも、いい指導者。信じてついていけば、きっとうまくいく」

 6月のアイルランド戦ではともに戦った仲間たちへの思いも熱かった。

 代表復帰への思いについては、「僕はもうおじいちゃんだから」(36歳)とあらためて否定した。

 若い頃とは違い、疲労からの回復に長く時間がかかる。代表に参加するとなれば、長い期間家族と離れなければならない。いまの自分には無理だ。

 ラグビーのキャリアを終えたらニュージーランドに戻り、自分の牧場を持ちたいと話した。父も牧場で競走馬のトレーナーをやっている。だから馬は自分にとって特別。トップリーグが再開する12月3日のサントリー戦は熊本でおこなわれるが、「初めて行く場所だから楽しみだけど、馬刺しは食べられないよ」と言った。

「そのサントリー戦はタフな戦いになると思うけど頑張る。あちらはジャパンにも選手が参加しているから、ライナーズはしっかり準備して戦いたい。新しく加わったナイジェル・アーウォン(WTB)は、すごく攻撃力がある選手だから楽しみにしておいて」

 ライナーズファンを笑顔にさせた。

 これまでを振り返り、初めてワールドカップに出場した2007年大会のフィジー戦、「歴史作るのは誰よ?」とFWを鼓舞した2015年大会の南アフリカ戦、神戸製鋼を倒したトップリーグの試合(2010年、2011年と連勝!)が深く印象に残っていると話したトモさんは、プレー中は集中してスタンドの声は聞こえないと言ったが、不思議なことがあると言った。

「昔から、父の声だけは、大勢の声援の中でも聞き取れたんですよ。そしていまは、モリさんの声だけは分かる」

 ライナーズのSH森雄祐のオカンで、いつも突き抜ける声で応援する由紀子さん。その甲高いボイスはいつも選手たちを元気にしてくれる。そのお礼の気持ちをトークの中にまぶし、会場を沸かせた。

 トモさん、そんなところが、たくさんの人に愛されるんだよなあ。

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