彼が死ぬまでやろうって決めたこと。山田裕貴インタビュー (4/4ページ)
でも、今は『ここがいいから、世間もいいって言うんだろうな』って視点で見ているし、吸収すべきものとして考えられるようになりました」
悔しいという感情の先に、そんな景色があるなんて言われなければ気づかなかった。彼がそう考えられるようになったのは、きっと山田裕貴という役者のレイヤーがひとつ上がったからなんじゃないかと思う。
「悔しいっていう感情から抜け出すまでは時間がかかりましたよ。気持ちに変化があったのは24、25歳じゃないですかね。今売れてるって言いたいわけじゃないけれど、作品にまったく出られない時期はやっぱり卑屈になっちゃって。『なんで、なんで、なんで!』って悔しい思いをたくさんしました。でも、そういう期間に痛みを味わっていて逆によかったなって思うんです。だって辛い感情を知っている分、人の気持ちをわかろうとするようになれたから。役だってそう。僕が演じるのは、ひとりの人間なんです。役の気持ちをわかろうとする姿勢が、僕のお芝居に生きてくる」
山田裕貴という人間から役者という居場所を奪ったら、どうなるんだろうか。答えはもうなんとなく予想がついていた。でも、最後は彼の口から聞きたかった。ここで、冒頭のシーンになるわけだ。――もし、役者という仕事がこの世に存在しなかったら。
「生きてないっすね。この仕事以外だったら自分らしく生きてないと思う」
なくなったら生きていけないものってなんだろう。私にはすぐにそれが見つからなかった。ずっとなりたくてやっと掴んだ編集者の仕事だけど、なくなったからって死ぬわけじゃない。それくらい、彼がさらっと言ってのけた言葉を自分の言葉にするのは難しかった。それでもこの記事は死ぬ気で書こうと思った。彼の言う「なくなったら生きていけないもの」が見つかるような気がしたから。
「これで役者をやめて、のうのうと生きてたらすいません」
そう言っておどけた彼だけど。逸らしたくなるほどに意志の強い眼差しと、嘘がつけないまっすぐな表情を見て私はちょっと可笑しくなった。
またまた、やめる気なんて絶対ないくせに。
(取材・文:井田愛莉寿/マイナビウーマン編集部、撮影:前田立)