松岡茉優が「こじらせ女子」を演じる暴走コメディー映画

まいじつ

松岡茉優が「こじらせ女子」を演じる暴走コメディー映画

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『勝手にふるえてろ』

配給/ファントム・フィルム 新宿シネマカリテほかにて全国公開中
監督/大九明子
出演/松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、北村匠海、古舘寛治ほか

日本ではなかなか“美人コメディエンヌ”が成立しない。外国ではかつてのゴールディ・ホーン、メグ・ライアン、バリバリ現役ではキャメロン・ディアスなど、平気でおバカやっても絵になる、受ける女優は枚挙に暇がないのにね。喜劇をやるとステイタスが下がるとでも思っているのだろうか。泣かせるより笑わせる方がはるかに大変だし、意義深いものなのにね。

と、マクラを振っておいて、このオフビート感充満の邦画コメディーの逸品を紹介したい。ヒロインを演じる松岡茉優は意外にも今回映画初主演。テレビドラマ『水族館ガール』(NHK)で桐谷健太との掛け合いにセンスを感じたあたりから注目していたが、今回のコメディエンヌぶりを見るにつけ“和製キャメロン・ディアス”と呼んで絶賛したいと思ったほど。

中学時代の同級生“イチ”(北村匠海)を忘れられない24歳OLのヨシカは、社内で同期の“ニ”(渡辺大知)から交際を申し込まれる。“人生初コクられ”に舞い上がるヨシカだが、同時進行する“脳内片思い”と“リアル恋愛”のはざまで頭を悩ませるハメになるという一席だ。

心地よい松岡茉優の「暴走」

絶滅動物を愛し、夜な夜なアンモナイトを愛でるヘンな趣味、理想の彼氏をイチ、現実の求愛者をニと勝手にネーミングして妄想に耽る“面倒くさい女”の歪んだ部分を彼女はチャーミングに演じ、笑いに転化させる。20代の“こじらせ女子”の脳内ってこんな感じもあり得る。松岡のような美人がモテないわけがない、というのはオトコの浅はかな既成概念。一見ドタバタに映るが、驚くほどリアルで、20代女子に共感度をアンケートしてみたいほど。

冒頭から心地よく“暴走”してくれる松岡は、コメディエンヌのセンスが問われる丁々発止の言葉の応酬で本領発揮する。特にニと、あーでもないこーでもないと言い合うあたり際立っている。カマトトぶらないのも何より。ラスト近くに発せられる題名と同じ科白『勝手にふるえてろ』は奥が深い、と唸った。

原作が綿矢りさなので、一筋縄ではいかない映画化なのだが、やはりヘンテコ女子を描いた新垣結衣主演の『恋するマドリ』(2007年)が良かった女性監督の大九明子が、松岡のオーラと集中力を絶賛していたが、おっしゃる通り。加えて即興力もあるのだから、鬼に金棒のコメディエンヌの誕生を祝いたい! ちなみに原作も、監督も、主演も、撮影も女子。その“女子力”の高さに男として喜んで脱帽したい。

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