関ジャニ∞・錦戸亮の「普通」が魅力的な社会派の異色群像劇映画

まいじつ

関ジャニ∞・錦戸亮の「普通」が魅力的な社会派の異色群像劇映画

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『羊の木』

配給/アスミック・エース 新宿ピカデリーほかで2月3日から全国公開
監督/吉田大八
出演/錦戸亮、木村文乃、北村一輝、松田龍平、市川実日子ほか

ギャグ漫画の巨匠の山上たつひこ、いがらしみきおの共作コミックスの映画化。ギャグというより不条理群像劇サスペンスの味わいが見どころ。主演が錦戸亮で、監督が『桐島、部活やめるってよ』(2012年)、『紙の月』(2014年)などの吉田大八なのも注目だ。

過疎化した港町の市役所職員・月末(錦戸亮)は、過疎対策の極秘国家プロジェクトによって仮釈放され、過去を隠してこの町に住み着くこととなった6人の男女の元受刑者(松田龍平、北村一輝、市川実日子ら)の世話係を命じられることとなるのだが…。テレビ・スポットもさんざん流されていたが、この先どうなるのか、6人とも殺人を犯しているのでまた惨劇につながるのか、という先入観がまずあるが、それを覆して意外や意外ヒューマンな感動を呼ぶのか、全く読めないところが持ち味だろう。やがて、港で身元不明の水死体があがり、町の平和が脅かされ、月末もまた傍観者ではいられなくなる…。原作者の名前、監督の実績からしても一筋縄ではいきそうもない、と思わせる。

錦戸といえば、言わずと知れた『関ジャニ∞』の一員だが、個人的にはテレビドラマ『ラスト・フレンズ』(2008年)でのアイドルらしからぬ強烈な“DV男”役が忘れられない。端正な顔を歪ませて女性に暴力を奮いまくる姿は、圧倒的だった。その残像が10年経ってもいまだにあるせいか、今回もいつ、その“狂気“の顔を出すのだろう、と少し期待していたのだが、非常に誠実で、受け身で、ごく普通の公務員を演じている。もちろん、自分が必要以上に傷つかないように用心深さも醸し出すのだが…。この“普通”の錦戸がイイのだ。地元に戻って来た元クラスメートの文(木村文乃)と再会して、交流するあたりのムードも悪くない。

人間が抱く「恐怖の根源」を描く

一方、他の6人の元受刑者たちも“普通の生活”を求めて、この町に来たのだろうが、そうスンナリと適応できるわけもなく、特に北村一輝ふんする一番危なそうなヤツはもう暴発寸前だったりする。

ここで描かれるのは、人間が抱くそこはかとない恐怖の根源とは何か、ということ。前出の言葉を使うなら、それは“先入観”だろう。例えば、町で事件が起こる、前科を隠していた人物がいる、そうなると人は短絡的にふたつを結び付けがちだということ。吉田監督は、その“先入観”を超越したところに新たな人間関係を構築する。

“普通の”錦戸クン目当てで見に来て、このいわゆる“社会派作品”とは異なるタッチの斬新な佳編に出会ってほしい。

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