やくみつるの「シネマ小言主義」 「空飛ぶ」少年に、国境は要らない 『ジュピターズ・ムーン』 (1/2ページ)

週刊実話

やくみつるの「シネマ小言主義」 「空飛ぶ」少年に、国境は要らない 『ジュピターズ・ムーン』

 難民やテロといった、今、世界中で最もシビアな危機を題材としながらも、難民の少年に「重力を自在に操り、空を飛ぶ」能力を持たせることで、不思議な寓話感を醸し出している本作。
 このコーナーでも以前に取り上げた、捨て犬集団が人間社会に反撃する『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』を作った社会派の監督らしい最新作です。

 舞台はハンガリーの難民キャンプから始まります。東ヨーロッパ特有の暗鬱とした空気を表すような暗い画面。必死で国境を越えようとする難民と、断固として越えさせまいとする警備隊。これがドキュメンタリー調の映画だと救いがなくなってしまいますが、あえてSFファンタジーとして見せているのが、「空飛ぶ奇跡」を起こしてしまう少年の存在です。
 先日、『世界を分断する壁』という写真集を手に入れました。38度線、米メキシコ国境など、いまだ世界中に残る「壁」ばかりを写したものです。
 人間が勝手に作った「国境」をめぐる果てしない諍いも、空を飛んでしまえば何ほどでもないじゃないか。この映画に、監督はそんなメッセージを込めたのかもしれません。

 それはそうと、自分は昔から「空飛ぶ」夢を繰り返し見ます。
 この映画を見たあと、“またあの夢を見てしまうなあ”と思ったほど、夢の中で自分が感じている浮遊感と少年の飛ぶ様がよく似ていました。ただ、自分の夢の中の場合、最後は必ずストーンと落ちていくので、えらく怖いんです。高い所は平気なので、落ちさえしなければ飛んでいる間は、案外と気持ちがいいんですが…。フロイトの夢判断では、どうなんでしょう。調べたことはないのですが、何かから解き放たれたい願望なのかも。
 ただ、空飛ぶ少年といっても、私らから見ると「おっさん」に近い。それでも浮遊する彼を目撃した人は口々に「天使を見た」と、打ち震えます。これはやはり宗教観の違いなのでしょうか。一般的な日本人の場合、背中に羽の生えたエンゼルの姿をしたのが天使だと思い込んでいますから。

 エンゼルといえば、今季、大谷翔平の移籍先がメジャーリーグ『ロサンゼルス・エンゼルス』に決まりましたね。

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