フランスは「週35時間労働」なのになぜ自殺率が高いのか

まいじつ

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日本では1カ月の残業上限を100時間と規定している。週あたりの労働時間に換算すると“65時間労働”だが、それでも過労自殺と過労死が絶えない。

一方でフランスは、週あたり35時間労働で、夏休みの期間は1カ月という国でありながら、人口10万人に占める自殺者の割合は、G8(主要先進8カ国)のなかではロシア、日本に次ぐ3位となっている。

過労死が長時間労働による肉体の悲鳴から起こる突然死であるのに対し、過労自殺は長時間労働と上司部下の上下関係、仕事のプレッシャー、裁量権のなさなどが組み合わさり“もうこれ以上は無理”と、生きる力が失せた結果に起きるケースがほとんどだ。

過労死と過労自殺を一緒に論ずることはできないが、長時間労働が蔓延している日本人ならば「フランス人は週35時間しか働かない」と聞けば、「何と優雅な」と思う人も多いだろう。

フランスにおける週35時間労働制は、従業員21名以上の規模を持つ事業所を対象に2000年から施行された法律だ。2002年には、20名以下の事業所についても対象になっている。

「現行法では週35時間を超える場合、時間給は原則25~50%増とされていますが、労使の合意がある場合は10%増にすることも可能です。もともとは失業率を改善させる目的で導入されたものです」(欧州在住日本人ジャーナリスト)

「仕事の密度」が上がりすぎたフランス

新しく雇用するのにはコストがかかる。そこで多くの企業は35時間労働制度が施行されてから“欠けた労働力”を、個人の時間単位の生産性を上げることで補おうとした。実際、国の調査でも4割強が「短縮された時間内で以前と同量の業務をしなければならない」「仕事の兼務が増加した」と答えた人が48.4%もいた。

また、別の調査では労働時間が減ったことで「賃金が抑制された」と不満を口にする人が7割もいた。

フランスの過労自殺の原因を探るとふたつの課題が見えてくる。

管理職層でサービス残業が増えているのに加え、グローバル化による競争の激化で業務目標が高く設定され、生産性の向上を強いられ、スピードが重視される 世界といつでもつながっているので24時間休まる暇がない

ITネットワークの進展が人間に過大なストレスをもたらしたのは、フランスの例を見ても、日本の事情からも間違いないようだ。

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