日本の証券市場の歴史を総まとめした『証券市場誕生!』 日本取引所グループに編纂の裏側を聞く(前編) (2/4ページ)

新刊JP

――日本取引所グループは証券市場を仕切る存在ですが、そんな日本取引所グループが証券市場の歴史を一冊の本にまとめました。これはどういう意図を持って?

石田:私が所属する金融リテラシーサポート部が中心になってこの本の編纂にあたったのですが、その目的は投資家のすそ野の拡大です。

――もっと多くの方に投資に目を向けてほしいと。

石田:そういうことです。ただ、投資は慣れていない人から見れば、敷居の高いものであるのも事実です。若年層はもちろんですが、実際にシニア層、ミドル層でもおそらく半分以上の方は証券取引と無関係の生活をおくっています。

そういう人たちに投資に興味を持ってもらうにはどうすればいいか。真正面からアプローチをしても、振り向いてはもらえないでしょう。そう考えたときに、「歴史」という側面から証券市場について知ってもらうといいのではないかと思ったんです。

2018年には東京株式取引所が兜町に設立されてから140周年を迎えますが、その前身をさかのぼると江戸時代に行き着きます。日本の近世から近代、そして現代に至る流れの中で、経済の中心がどのように変化してきたのか。それを追いかける本にすれば、一般の方にもとっつきやすい内容になると考えたんですね。

実はもともと小説仕立てにするつもりだったのですが、史料の点数であったり、東証の親会社が出す本ということもあり、内容の精緻さが大切になるので、そう書くのは諦めたエピソードもあります(笑)。

――読んでみると、この一冊で近代経済史をおさらいできてしまいますよね。まずは世界最初の公設先物取引所が、徳川吉宗が設立した堂島米会所だったというのは驚きでした。

石田:その話をこういった一般書で書いたのは初めてではないかと思います。これまで多くの研究者が堂島米市場のことを論文などで書いていましたし、私たちの間でもそれは公然の事実として扱われていましたが、こういう本においては書かれなかった。

というのも、経済学を専門とされている先生方は、堂島米会所は米という商品の市場であって、金融の機能がそこにあったということにあまり触れないんです。

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