マルチタスク、薄暗い照明、長い運転時間など。科学的に裏付けられた人間の知性を損なう10の事
特定の活動は人の認知機能を低下させることで知られている。アルコールを飲んでしまえば、誰であろうと知能テストで良好な成績など期待できないだろう。頭を何度も壁に打ちつけたって、やはり思考力の向上は望めない。
だが脳機能を低下させるものはほかにもある。そうした活動による悪影響は一時的ということもあるが、中には長期的に続くものもある。
ここでは科学的に裏付けられた知性を損なう可能性の高い10の事を見ていこう。
・10. 薄暗い照明
References:neurosciencenew
証明の明るさが学習能力に影響する。
ナイルグラスネズミは、人間と同じように昼に活動し、夜には眠る習性がある。その脳を研究するミシガン州立大学の研究者は、ナイルグラスネズミを迷路を抜けられるように訓練した。それからネズミを昼に明るい照明が使われるグループと、薄暗い照明が使われる2グループに分けてみた。
実験から4週間後、薄暗い照明グループのネズミで海馬の容積が30パーセントの減少していることが確認された。ここは学習や記憶にきわめて重要な部位である。さらに2グループのネズミを前回訓練した迷路に再び入れてみると、明るい照明を使ったグループでは成績が向上していたが、薄暗い照明のグループでは以前よりも成績が悪化した。
なお研究で使われた薄暗い照明は家庭やオフィスで使われる一般的な室内用のライトだった。
・9. スマートフォン
References:cnet
テキサス大学では800名のスマホユーザーを対象に、注意力が必要なコンピューターテストを受けてもらった。被験者の一方のグループはスマホを別室に置いておくように指示され、また別のグループはスマホをマナーモードにした上で、画面を机に伏せて置くように指示された。成績は、スマホを別室に置いてテストに臨んだグループの方が良好だった。
研究者によれば、視界にスマホがあると集中力や課題遂行能力が阻害される。現代人はスマホを確認することに慣れすぎてしまったために、ほかに集中せねばならないことがある場合、意識下でそれに逆らわねばならない。
スマホから意識を逸らすために努力が必要になり、それゆえに目の前の仕事に集中するためのエネルギーと注意力が低下する。こうしたことを防ぐには、スマホを完全に手の届かないところに遠ざけ、意識下からそれを取り除かねばならない。
・8. 幼児期の加工食品の過剰摂取
References:theguardian
幼少期に偏った食事ばかりを食べていると認知能力が低下するという研究結果がある。およそ14,000人の子供の食習慣と知能指数を調査した研究では、3歳の時点で主に加工食品を食べていた子供は、栄養豊富な食事を与えられた子供に比べて、5年後の平均IQが低いという結果が得られた。
ビタミンや栄養が豊富な食事は、脳の最適な発達を促してくれる一方、加工食品ではそうしたことがない。脳が最も速く発達するのは生まれてからの3年だ。この期間に与えられる栄養は、その後長期にわたり脳機能全般に影響を与える。
3歳の時点で加工食品しか与えられなかった子だと、その後にきちんとした食事が与えられるようになっても、あまり改善効果が見られないという。
・7. 同時に複数のことを行う(マルチタスク)
References:.stanford.edu
意外にも同時に複数のことを行うのもよくないそうだ。
脳は同時に1つのことにしか集中できないようになっている。さまざまなことを同時にやっている場合、脳は注意力を素早く何度も切り替えている。その結果、各々の課題は1つのことに集中した時に比べてお粗末な仕上がりとなる。
だがマルチタスクはいいという主張もたくさんある。そのためそれが一部の人だけが持つ才能なのではと疑う専門家もいる。そこでスタンフォード大学では、人々のマルチタスク能力を調査してみた。
その結果、正解は反対であった。一度に複数の作業をこなすのが好きで、それが得意だと考えている人は、1つのことだけに集中する方が好きだという人よりも、複数の課題の処理が下手だったのである。
一度に複数のことをこなすとパフォーマンスが低下するのみならず、作業が多過ぎればIQまで低下する。ロンドン精神医学研究所の研究によれば、マルチタスクは一時的にIQを10ポイント低下させる。これは大麻や寝不足の悪影響よりも大きな低下だ。
マルチタスクをすると脳を損傷、早期の認知機能低下につながる可能性。シングルタスクで脳に若さと活力を。 : カラパイア
・6. 糖類
References:livescience
カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、ラットを使い果糖が多く含まれた食品の影響を調べた。実験では、迷路の抜け方を訓練したラットを2グループに分け、どちらにも果糖を加えた水を与えた。しかし一方のグループには、脳細胞のダメージを防ぐと考えられているオメガ3脂肪酸も与えた。
6週間後、オメガ3脂肪酸を与えられたラットはそうでないラットに比べて迷路実験の成績が向上した。
一方、与えられていないラットでは、シナプス活動の低下が見られ、以前学習したルートを思い出しにくくなっていた。
果糖を大量に摂取させると、ラットのインシュリン濃度が上昇する。脳細胞は糖をエネルギー源として利用しているが、果糖が安定して流入してくると、脳細胞がそれを保管・使用する態様が変化する。これがさらに思考や感情処理にも影響を与えるようになる。
甘党な人に朗報なのは、オメガ3脂肪酸が果糖による脳細胞のダメージを防いでくれることだ。アイスクリームを食べたら、青魚を食べるといいかもしれない。
・5. 長い通勤時間(運転)
References:le.ac
1日に2時間以上運転するとIQが低下する。レスター大学では5年間にわたり50万人以上の人々の生活習慣を追跡しつつ、対象者の記憶テストと知能テストを実施した。
被験者のうち、1日に2時間以上運転していたのは93,000人で、彼らのテストの成績はまったく運転をしない人に比べて劣っていた。また調査期間を通じて、長距離ドライバーの認知能力には徐々にだが低下が見られた。
運転中は刺激に乏しく、頭脳は不活発になる。IQの低下はこれに関係していると考えられる。似たような傾向はテレビを1日に3時間以上観ている人にも見られた。
・4. 時差ボケ
References:berkeley
時差ボケになると数日はぼうっとしてしまうが、これが思った以上に長く記憶力と学習能力に影響する。
カリフォルニア大学バークレー校では、ハムスター(ほぼ完璧な概日リズムを持つ)を慢性的な時差ボケ状態にした。実験では国際線による時差ボケを再現するために、1ヶ月間、1週間に2回の頻度でハムスターの睡眠時間を6時間ずつずらした。
この実験の最中と、実験が終了して邪魔されることなく睡眠できるようになってから1ヶ月後に、記憶力と学習能力を試す課題をハムスターに行わせてみると、実験期間中はもちろんのこと、実験終了後1ヶ月が経過していても成績に低下が見られた。
さらに調査を進めると、時差ボケを味わわされたハムスターは、対照群と比べて、海馬の神経細胞が半分しかないことも判明した。この海馬の劣化は、通常の睡眠パターンに戻ってからも数週間ははっきり確認できた。
飛行機による時差ボケはもちろん、普段から睡眠時間が不規則だったりしても海馬にダメージが現れる恐れがある。
・3. 肥満
References:newscientis
余分な脂肪は、脳を含めた内臓に悪影響を与える。17名の肥満女性の脳を調査した結果、彼女たちの脳は平均体重の女性よりも糖を速く代謝していることが明らかになった。
また肥満女性には、痩身手術を受ける前後に認知テストを受けてもらった。すると痩身手術後のテスト結果は驚くほど改善された。特に計画や整理などに関連する実行機能において大きな効果があった。
肥満している人の脳は糖の処理法が異なっている。その処理法の違いが脳に構造的ダメージを与え、それが認知機能に悪影響を与えていると考えられている。
また別の成人500名を対象とした研究では、過体重の人は白質が平均よりも少ないことが判明している。
白質は脳のさまざまな領域をつなぎ、領域間のコミュニケーションを実現する。加齢とともに自然に減少するものであるが、過体重だと特にそれが早い。
50代の過体重の人が持つ白質の量は、痩せている60代の人と同レベルだ。面白いことに、過体重の人と平均体重の人の白質量の違いは、中年以降にならないと現れない。この年齢に到達すると、白質が一層脆弱になることが原因だと考えられている。
・2. 幼少期の体罰
References:sciencedaily
アメリカの研究によれば、幼少期にお尻を叩かれてきた子供はそうでない子よりもIQが低い傾向にある。研究チームは、2歳から4歳ならびに4歳から9歳の2グループの認知能力を検査し、さらに4年後にも再検査を行った。
年長グループでは、お尻を叩かれて育った子供はそうでない子供よりも3ポイント、年少グループでは5ポイント、平均IQが低かった。
世界的なデータでも、お尻を叩くしつけが一般的な国で子供の平均IQに低下が見られる。
その相関関係の原因として考えられるのがストレスだ。叩くという行為は子供にとって慢性的なストレス原因であり、ビクビクしたり、怯えたりする子に育ってしまう。こうした要素がIQの低下に関連していると考えられるのである。
・1. おバカな内容のテレビ番組
References:.appel-lab
こと知能に関する限り、あなたはあなたが目にしているものであることが判明している。テレビ番組にも有益なものがあるだろうが、教育的価値のないくだらない番組が氾濫していることもまた事実だ。が、これが人をバカにすることが証明されているのだ。
オーストラリアの心理学者が行った実験では、大学生にさまざまな分野のテストを受けてもらった。テストに先立ち、半数にはバカな決定ばかりをする間抜けな男の話を読んでもらった。すると、それを読んだグループの成績はそうでないグループよりも悪いという結果になった。
これを行ったマーカス・アッペル教授は、その結果を「メディアプライミング効果」のせいであると主張している。メディアプライミング効果とは、メディアに暴露されたことによる後遺症のことで、その後の行動・意見・知性に影響を与えるものだ。
すなわち間抜けな男のドラマは笑えるかもしれないが、その間抜けさ加減が伝染するという恐ろしさがあるのである。
written by hiroching / edited by parumo