藤井聡太六段・「異次元出世」で高校生賞金王になる(3)師弟対決に「上座は譲らない」 (1/2ページ)
- タグ:
-
週刊アサヒ芸能 2018年 3/8号
-
杉本昌隆
-
藤井聡太
-
将棋
-
羽生善治
まさに「最強の高校生」となる藤井だが、気になるのがライバルの不在だ。朝日杯の優勝を受けて、永世名人の称号を持つ谷川浩司九段(55)は、
〈20代・30代の棋士に対しては、「君たち、悔しくないのか」と言いたい気持ちもあります〉
と公式コメントを発表したが、
「言葉を選ばずに言うと、悔しがっている人は少ない。なぜなら、プロ棋士たちはみんな『藤井聡太は別格だ』と認めているからです。将棋における勝敗は、ある種の“強者への信頼”が大きく影響します。例えば『いいか悪いかわからないが、羽生さんが指したからには好手だろう』と考えたり、トップ棋士に対して形勢が悪くなると『挽回は難しい』と諦めることがある。今後は藤井さんに対してもそういう心理が働くことになり、さらに勝ちを重ねていくと思います」(松本氏)
現在、10代のプロ棋士は藤井ただ一人。プロ予備軍の奨励会「三段リーグ」にも、同年代はほぼいない。
「切磋琢磨して実力を伸ばした『羽生世代』とは異なり、藤井一人が孤高の存在として年上の棋士に立ち向かっていく構図がしばらくは続くはず」(将棋ウオッチャー)
そうなると藤井の「仮想敵」には、昨年に対将棋プログラムの棋戦・電王戦で佐藤名人を破った「ponanza(ポナンザ)」のようなAIしか思い浮かばない。早稲田大学教授で、コンピュータ将棋協会会長の瀧澤武信氏に話を聞いた。
「コンピュータ将棋は昨年の段階よりもさらに強くなっていて、ほとんど人間が勝負にならない域にあります。100%勝てる、というわけではないのですが、演算能力や体力面で前提条件が違いすぎて、人間対コンピュータの対局にはもはや意味がない、と開発者たちは考えているのが現状ですからね」
事実、10年から形を変えて続いてきた電王戦は、昨年をもって終了。現在の将棋界に、棋士とAIが対局する大舞台はない。だが、藤井を最も近くで見続けてきた杉本七段は断言する。
「プログラマーの方に聞くと、『AIが将棋の全てを解明したわけではない』とおっしゃっていました。であれば、藤井にも十分勝てる可能性はあると私は思います。