陰謀論やトンデモ説はなぜ生まれるのか? 歴史研究者・呉座勇一さんに聞く(1) (2/4ページ)
2人で茶飲み話をしながらテーマを検討していたのですが、その中で「陰謀」という切り口が出てきまして、これは現代の問題にも通じると思ったんです。
というのも、ここ数年フェイクニュースや陰謀論が問題になっていますが、あれらはソース、情報の出所が良く分からない。それは歴史研究の世界でも同じで、例えば「本能寺の変」をめぐる議論に、歴史学者はほとんど関わっていないんです。学界の人間は「本能寺の変の黒幕はこいつだ!」みたいな本は書きません。では、誰が書いているのかというと、作家や在野の歴史研究家たちであり、彼らが考えたあやしげなトンデモ説が「新説」として広まってしまっている現状があります。
それこそ衝撃を受けたのが、明智憲三郎さん の説ですね。明智光秀の子孫を称している方ですが、『本能寺の変 431年目の真実』で本能寺の変について奇説を展開されています。
――ベストセラー(*1)になった本ですね。呉座さんはこの『陰謀の日本中世史』で明智さんの説を徹底的に批判されています。呉座:そうしないとまずいなと。というのも、おっしゃる通り明智さんの本がベストセラーになっている状況であり、「明智光秀の末裔を称する人が何かおかしなことを言っている」と笑ってはいられない影響力を持ちつつあります。
(*1…『本能寺の変 431年目の真実』は出版元である文芸社のウェブサイトによると現在40万部)
ただ、学界はこういうことにはノータッチのスタンスですから、いつか誰かがどうにかしないといけないと思っていました。
――なるほど。そのような問題意識があって、このテーマで書く必要性を感じられたわけですね。呉座:それが一つですが、他にもあります。ビジネス誌の「歴史に学ぶ」というような特集で、経営者や識者が歴史小説を推薦図書にあげることがありますよね。“これを読めば歴史が分かる”という文脈で薦められていることも結構多く、問題だなと思っていました。
そもそも陰謀論は、小説の延長のようなところがあります。