患部にはプレート。それでもヘル ウヴェは迷わずプレッシャーをかけに行く。 (2/2ページ)
ヘルがチャンスをつかんだのは、チームがやや危機的状況にあったからでもある。
もちろん当の本人は、怪我人の復帰後もジャージィを守り抜きたいという。キックを蹴った先で圧力をかけるというチーム方針を把握しつつ、持ち味の突進力を披露しにかかる。
やっと、試合に出られる。その喜びで、自然と表情を崩す。
「LOにはいい選手がいます。まだ試合に出ていないLOは真壁(伸弥・故障離脱中)と僕だけ。ただ今週は、僕がチャンスをもらいました。今週のテーマは、プレッシャー。敵にボールをあげて、そのままプレッシャーをかける」
チーフス戦のメンバー中、ツアーに参加していない選手はヘルを含めて6名。その他にも初先発がいるとあって、選手間の連携度合いがいつも以上に注目されそうだ。もっともヘルは「(次戦出場組には)日本代表でも同じメンバーがいて、皆、知っている(仲)」。流ちょうな日本語で、「大丈夫」と言う。
「新しいコンビじゃないから、大丈夫。自信がある!」
心配があるとすれば、「ゲームフィットネス」か。確かにNDSでも走りまくってきた。しかし、高強度の衝突を重ねながら縦横無尽に走るという真剣勝負用の体力がどこまで戻っているか。そればかりは、試合が始まるまでわからないという。何より患部には、いまも補強用のプレートを入れている。意気込みを問われれば、「嬉しい」と同時に「怪我をしないように」とも言ったものだ。
もっともキックオフの笛が鳴れば、ヘルは真っ先に「プレッシャー」をかけにゆくだろう。サンウルブズでの定位置争いに勝てば、2019年のワールドカップ日本大会出場への道も開けてくる。カムバックの一戦を今後の名刺代わりとすべく、静かにその時を待つ。
(文:向 風見也)