野村克也×江本孟紀「2018プロ野球開幕“ど真ん中大放談”」(3)監督の共通点は「ごますり」 (1/2ページ)
──昨シーズン最下位のヤクルトは、野村さんの愛弟子である宮本慎也ヘッドコーチが就任しました。
野村 ああ、少なくとも私は期待してますよ。非常に理にかなった野球をするし、しゃべることもちゃんと理論がしっかりしてる。ただ、彼も俺と一緒で、処世術がまったくダメなんだよね。さっき名前の出たラミレスなんかもそうかもしれないけど、非常に日本人的というか、お世辞と世渡りのうまさで監督になる連中が多すぎる。12球団の監督の共通点は、「ごますり」が多いんだよ。監督の人材が球界の一番の問題かもしれんね。
江本 今は野村監督みたいに理論派で説得力のある監督はいないですよね。もう一つ、監督に向いてるのはコワモテの人ね。星野さんみたいな。ところが、今はどっちつかずの中間の監督が増えましたね。「この人、どういう野球するの?」っていうのが見えない。
野村 監督の資質という話で言えば、私は阪神に3年いましたけど、辞める時に久万オーナーに「誰かいい監督いませんか」と言われたんですよ。でも、阪神という球団は非常に難しい。
江本 野村監督でもそう思いますか。
野村 何が球団をダメにしてるか? 担当記者とファンですよ。遠征行ってもどこ行っても、ファンやら記者に引っ張り出されて選手がホテルにいないんだから。これには参ったね。人気先行の典型的なチームでしたよ。だからこう言ったんです。「怖くて厳しい監督がいいですよ」。選手に言うこと聞かせられないからね。最初に推薦したのは西本幸雄さん。あの人は口下手で、手が出るほうが早いから。
江本 鉄拳制裁(笑)。
野村 そうそう。でも、実は私に頼む前に西本さんには断られてたんですよ。体調が悪くて、一緒に連れてきた医者から「あんたら、西本さん殺す気か!」と言われたと(笑)。そうするともう、星野しかいないですよ。「賭けてもいい。二つ返事で受けますよ」と言ったら、あとで「野村さんの言うとおりでした」と。星野は俺に感謝せんとな。