世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第268回 ヒトを「安く買い叩く」ために (2/3ページ)
とはいえ、いかなるアスリートであっても調子の波というものがある。過去に、絶不調のコンディション下において、11秒という凡庸なタイムを記録してしまったこともある。というわけで、過去の平均タイムを計算すると、10.8秒。最高タイムを問われ、過去最高の10秒ではなく、過去の平均の10.8秒で回答する。これがまさに、経済学のいう「完全雇用の失業率」の考え方なのだ。
デフレ深刻化で雇用環境が悪化すると、構造的失業率は否応なしに上昇してしまう。ということは、構造的失業率は「完全雇用の失業率」ではない。と、「平均」について学んだばかりの小学生でも気が付きそうなものだが、世界の経済学者や官僚たちは、過去の失業率の平均を計算し、
「わが国の完全雇用の失業率は○○%」
などとやっているのである。異様な世界、としか表現のしようがない。
なぜ、このような異常な考え方がまかり通るのかといえば、
「非自発的失業など存在しない」
「今は常に完全雇用」
「財政出動による失業対策などやってはならない。やるならば、雇用の流動性強化」
と、世の人が思い、雇用対策の財政政策が行われず、高い失業率が維持されると都合がいい勢力があるためだ。もちろん、資本家、大企業の経営者、投資家など、いわゆる「グローバリスト」である。
グローバリストが「高失業率」をなぜ好むのか。簡単だ。その方が、「ヒト」を安く買い叩ける。ヒトを安く買い叩くと、中長期的にその国の経済力は落ちていかざるを得ないが、そんなことはどうでもいい。グローバリストの目的は「短期の利益最大化」であり、中長期の経世済民ではない。彼らにとって、国家も国民経済も、行動を制約するものではないのだ(グローバリストとは、そういう人種だ)。
それでは、失業率が低いときはどうするか。低失業率の時代は、ヒトが「高くなり、大切にされる」ことになるが、それはグローバリストにとっては我慢がならないことだ。だからこその、「人手不足だから、移民受け入れ」なのである。
失業率が高いときは、「今は完全雇用」と失業対策を防止し、ヒトを安く買い叩く。失業率が低いときは、「人手不足だから移民を受け入れざるを得ない」と、これまたヒトを安く買い叩こうとする。