アメリカには理論上、完全犯罪を成し遂げられる場所が存在する。イエローストーンの西側にある「死のゾーン」 (2/4ページ)

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・完全犯罪までのシナリオ
 イエローストーン公園のアイダホ州内(死のゾーン)である男が殺人を犯したとしよう。彼は逮捕され、裁判のためワイオミング州に移送される。これは公園全体の司法権がワイオミング州にあるためだ。

 しかし、米国の憲法では、裁判は犯罪が発生した州で行なわれなければならない、とあるため、被告の男はアイダホ州で裁判を行うべきだと訴えることができる。

 そして、アイダホ州の裁判所で裁判官の前に立った彼はとっておきの切り札を出す。それが合衆国憲法修正第6条だ。

 この第6条は、「すべての被告人は、犯罪が行われた州およびあらかじめ法律で定められている地区から選ばれた偏りのない陪審員の前で公正な裁判を受ける権利がある」と明言している。

 これ自体はまぎれもないことなのだが、イエローストーン国立公園の場合はちょっと事情が違ってくる。

 イエローストーンができたとき、公園全体は現在のミネソタ州やアイダホ州の一部を含めて、ワイオミング州の連邦地区内にあった。

 通常は「犯罪が行われた州」と「法律で定められた地区」が一致するのが普通だが、イエローストーンの場合、犯罪が行われた場所がアイダホ州内でも、おかしなことだが法律で定められた管轄区はワイオミング州ということになる。

 つまり、陪審員はイエローストーン内のワイオミング州とアイダホ州がわずかに重なっている例の"死のゾーン"に住む人たちの中から選ばなくてはならない。

 ところが、被告にとって都合がいいことに、この地区には住んでいる人は誰もいないのだ。要するに、陪審員団を結成することができず、被告を裁判にかけることは不可能になる。理論的にはこの犯罪者は無罪放免になってしまうということだ。
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