米ゼロックスの買収拒否で激震 富士フイルムが嵌まった交渉混迷の行方 (2/2ページ)
「以降もリストラなどによってリーマンショックを乗り切り、'10年度には黒字転換。'13年度で初めて売上額が2兆4000億円に達したものの、以降は伸び悩んでいた。'17年度に至っては、大幅減益を予想しているほどです。ここを脱却できなければ、今後は再びジリ貧状態に陥る可能性が高い」(同)
そのため古森氏は最後の大仕事として、ゼロックスと富士ゼロックスの合併による合理化で、1万人規模のリストラを断行。その余剰金で、さらにライフサイエンス事業に力を注ぐ方針を固め、今回の買収への動きに出たのだ。
古森氏は、あるメディアのインタビューで「今後、人類を脅かす感染症に対する薬剤や、がんやアルツハイマーなど、いまだに解決法がないアンメット・メディカル・ニーズの高い薬剤の開発に注力したい」と夢を語っていたが、一方で医薬品業界は、老舗の武田薬品でさえも新薬開発で苦難を強いられている。
「新薬にかかる開発費は約1000億円と言われ、開発期間も10年かかることはザラ。しかも、投資と時間をかけたからといって、それが成功するかどうかも分からない。そのため富士フイルムHDは、実績のあるゼロックスの医療画像診断機器、写真フィルム技術の液晶機器用フィルム事業、今もアジアで堅調な事務機器をベースに、確実に現金を稼がなければならない。加えて買収によって事務機器で世界トップとなり、事業再編と合理化で、さらなるリストラを進める必要に迫られていたのです」(前出・経済誌記者)
しかしゼロックス側は、伝統を持つ企業買収に一銭も持ち出さない富士フイルムHDの姿勢に不満がくすぶり続け、大株主たちが高値での買い付けを突きつけたのだ。
「ゼロックスの現在の1株は28.46ドル(5月7日時点)。それをアイカーン氏らは、40ドル以上で買い取るなら検討するとしているが、富士フイルムHDとしては現段階(17日)では完全なノーだろう」(関係者)
証券アナリストは、こうも指摘する。
「ゼロックスの将来性はマイナス要因が多すぎて、富士フイルムHDの買収案には懐疑的な声も多かった。それだけに、白紙となって返ってよかったという見方もあるのです」
ただし、どちらに転んでも富士フイルムHDに苦難の道が待ち受けていることは確かだろう。