「組織に呑みこまれる怖さを書かずにはいられなかった」 “社畜”精神から生まれた新時代の仕事小説とは? (2/4ページ)

新刊JP

一方で、私は1979年生まれの就職氷河期世代なので、仕事に対するマインドや働き方は彼女よりも上の世代と近いところがあって、いわゆる「社畜」側の人間なんです。なので、はじめは就職氷河期世代の人間を主人公にしようと思っていたのですが、話自体が暗くなってしまいそうだと思い、氷河期世代の一つ下にあたる「プレッシャー世代」の生まれにして、絶対に定時で帰って残業はしないという主人公したんです。

――あえて真逆のタイプを主人公にした、と。その主人公の結衣は32歳でウェブ制作会社に勤めています。執筆にあたって取材はされたんですか?

朱野:ウェブ業界の会社に勤めている知り合いに、1話ごとに1時間くらい相談しましたが、取材というほど掘り下げて話すものではなかったですね。こういう状況だとどういう仕事が出てくるの? とか、コスト感覚とか、そのくらいです。

どんな会社にいても共感できる話にしようと思っていたし、業界モノとして読まれるのは避けたかったので、そうならないように意識しました。私自身、9年間会社員をしていた経験があるので、その部分も下敷きにしています。書くのは楽しかったですね。

――第1話で騒動を起こす三谷佳菜子は、「絶対に残業しない」というポリシーを持つ結衣とは正反対で、「死んでも出社する」というタイプですね。

朱野:困った人ですよね(笑)。この物語に出てくる「困った人」は、基本的に自分をモデルにしています。

第1話は、結衣とは真逆のタイプである三谷が体調を崩しながらも「皆勤賞」にこだわるという話ですが、私も高校時代に皆勤賞を狙っていて、自転車で登校中に事故のようなものに遭遇してしまい、怪我をしながら学校に行こうとしたことがあります。

今思うと、なぜそこまで皆勤賞にこだわっていたのかは分からないですが、真面目さが暴走していたところがあったんですよね。

――結衣の「絶対に定時帰り!」というのも含めて、融通が効かないポリシーを持っている人って組織の中にいますよね。

朱野:そうですね。

――そのポリシーがぶつかりあっているのがまさに第1話ですが、現実だとチームがめちゃくちゃになってしまうのでは…と思います。
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