「組織に呑みこまれる怖さを書かずにはいられなかった」 “社畜”精神から生まれた新時代の仕事小説とは? (3/4ページ)

新刊JP

朱野:ただ、チームの中には多様な価値観があるほうが良いと思うんです。結衣と三谷は両極端だけど、そういう自分と対岸にいるような人が同じチームにいることがどこか心の救いになったりするじゃないですか。

■「インパール作戦」を下敷きに物語を考える ――そういう意味では、組織をまとめるリーダーの存在が大事になりますが、「福永」という結衣たちの上司はとにかく無茶なプロジェクトを振ってくる相当なクセ者です。

朱野:いわゆる「ブラック上司」ですね。第2話以降はウェブサイト構築のプロジェクトを物語の中心に据えていますが、これは「インパール作戦」という第二次世界大戦の軍事作戦を下敷きにしています。

――「インパール作戦」は日本陸軍史上最大の敗北を喫した作戦ですよね。「無謀なプロジェクト」といえばこの作戦を思い出す人も多いはずです。

朱野:はい。この物語でも、結衣がこの「インパール作戦」を知って、自分たちの無謀なプロジェクトと重ねたりしています。

私が「インパール作戦」を知ったのは、NHKのドキュメンタリー番組がきっかけだったのですが、軍隊の話とはとても思えなかったんですよ。「あ、これ、会社でもある」って。そこで、牟田口廉也という、作戦を率いた司令官のエピソードを参考にして、福永という人物を描いています。

――あまり詳しくはお聞きしないようにしますが、この物語の終わり方っていわゆる「大団円」ではないですよね。

朱野:そうですね。会社員時代、マーケティングの仕事をする中で、「成功体験から学ぶことは何もない」ということを教えてもらったんですよ。野村克也さんじゃないですけど、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」だと思います。

この物語もフィクションではありますが、その考えに準えています。ビジネス書的な要素を織り交ぜたいと思っていたので、主人公が「インパール作戦」という過去の失敗事例に学びながら、目の前のビジネスを進めていくという作りにしました。

――朱野さんはビジネス書を読まれるのですか?

朱野:最近は読んでいませんが、会社員時代は読んでいました。『日経ビジネス』の「敗軍の将、兵を語る」は好きでしたし、逆に経営者が書いた成功譚も読みましたね。

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